僕は僕
僕は、花山さんと別れて教室に戻ろうとしていた。
「林、調子はどうだ?よくなったか?」
佐々木先生だ。
「調子はよくないけど、何ともなかった」
「また訳のわからないこと言うなぁ、そう言うの流行ってるのか?」
「そのうち流行るかもね」
「まぁいい、この後の授業はちゃんと受けろよ」
「うん、わかってるよ」
教室に入った瞬間。
「歩美っ!」
ジュンが叫んだ。
「大丈夫だったか?傷はなさそうだな」
カズもタカ君も寄ってくる。
「よく無事に逃げて来たな」
「タカ君、別に逃げて来た訳じゃなよ」
「で、何だったんだよ花山さんは」
「美菜さんのこと」
「だから俺が最初に言っただろ、美菜さんはやめとけって」
「で、花山さんはどんな人だった?」
ジュンが心配そうだ。
「ブスなイケメン」
「何だよそれ、まっ無事ならいいけど気をつけろよ」
みんな心配してくれてたみたいだ、それがわかって少し気持ちが落ち着いた。
僕は普段あまり怒らないからか、周りに八つ当たりするような人が嫌いだ、親に怒られた、友達や彼女と喧嘩した色々怒る理由はあるだろうけど、周りは無関係だ。
苛立ちが周りに漏れる、僕なんか悪い事した?と聞きたくなるような人が嫌いだ。
「みんな心配させてごめんね、後ありがとねっ」
だから僕は、周りに感情を悟らせないように心がけている、嬉しい、楽しいはまだいいとして、負の感情は見せないように、嫌いな自分が見られないように。
2年生初日は、一日中何とも言えない気持ちで過ごした。
「お前今日、何とかって奴に捕まったんだって、大丈夫だったか?」
「ケン君情報早いね」
「ジュンがずっと、どうしようどうしようってテンパってたからな」
「そうだったんだ」
今はケン君にバイクで送ってもらっている。
前より行き帰りの時間は減ったが、その分ケン君と二人で話す時間も減った、そこは少し寂しい。
「で?どんな奴だった?殴られたりしなかったか?」
「殴られたり、脅されたりはないんだけど、むしろ殴られた方が楽だったって言うか」
「あ〜、あれか、いい男だったんだな?そりゃ厄介だな」
「顔はブスなんだけどね、それくらいしか文句言えなくて、それがなんかヤダかった」
「でも勝つんだろ?」
「うん」
「お前って頑固だもんな、あんまり欲しがらないくせに、欲しいものは絶対にって奴だよな」
「そうかな?自覚ないけど」
「まっ、俺が何言ったってお前の気持ちなんて変えられねぇし、お前が納得するまでやりゃいいけど、歩美・・」
「ん?何?」
「変わんなよ、お前のいいところは優しいところだ、変わんなよ」
「優しいかどうかは知らないけど、変わらないよ」
「ならいいけどよ、まっ頑張れよ」
「うん、ありがとねっ」
僕は僕、変わるってなんだろう・・・




