1(始まりの日)
まぶしくて優しく楽しげな・・・誰かの笑顔。声はわからないけれど自分の名前だとわかる言葉を呟いてその人はまた笑う・・・でも、その人が誰なのかわからない。
それでもなぜか大切な人だった気がして・・・同時に悲しい気持ちにも襲われた。
それが僕の唯一の「記憶」
「眩しい…」
僕が目を開けるとまず空が見えた。
その空には2つの輝く太陽と一羽の鳥が飛ぶのが見えて、視界の端を塞ぐように木々が生い茂っていた。
「あれ…??ここどこ?」
僕は仰向けの体勢から慌てて立ち上がる。
「ってか、なんでこんなところで寝てるの僕!?」
周りを見ても青々と葉が生い茂った木々…
いや鬱蒼と生えて奥が見えないくらいに広がった森だけだった。
「僕…名前…なんだっけ??落ち着け…落ち着け…。『太陽』も何故か2つあるけど…言葉はわかるし…単語の意味もわかってる。けど…自分の記憶が思い出せないなんて……」
今度は頭を抱えてしゃがみこみ、大きくなる独り言を呟いて…自分自身を落ち着かせようと試みる
ガサガサと近くで葉が揺れる音がして、そちらに視線を向けるとその方向から声がした。
「だれかいるの?」
どこかあどけない声がして、声の主がその姿を表した。