第4夜 バルムンク(Balmung)
本来なら大元である『グラム』で紹介したほうがいいのでしょうけど。
名前の響きと形状がはっきりしているということで、『バルムンク』として紹介します。
出典 北欧神話
所有者 シグムンド(ジークムント)、シグルド(ジークフリート)
3つの名を持つ剣
まずは、大元となったとされる『グラム(Gram)』。
北欧神話に登場する武器。 その名は古ノルド語で『怒り』を意味する。
『ニーベルンゲンの歌』の『バルムンク』、『ニーベルングの指環』の『ノートゥング』のモデルとされる。
長さ 2メートルの長剣で、シグムンドやその息子であるシグルズが扱った魔剣とさ れ、オーディンが作り、シグムンドに託された物だが、またオーディン自身が槍の一撃で砕いた。これはシグムンドを勇者と認め、その魂をエインヘリャルとしてヴァルハラに迎える為であった。
その後、グラムはシグルズと共に鍛冶屋のレギンのもとに渡り、レギンはこれを修理し、竜の姿をした魔人ファフニール(実はレギンの兄)を倒す為にシグルズに与えるが、自分自身もシグルズに倒される事になる。
『ニーベルンゲンの歌』の『バルムンク(Balmung)』。
幅広で黄金の柄には青い宝玉が埋め込まれた剣、鞘は金色の打紐で巻き上げた宝剣。
本来はニーベルンゲン族の宝だったが、財宝の分配を巡って争ったジークフリートが奪い取り、ニーベルンゲン族を斬り捨てるのに使う。その後、ジークフリートの愛剣として、数々の軍功を挙げた。
ジークフリートが暗殺された後、ハーゲンはニーベルンゲンの財宝をライン川に沈めるが、バルムンクだけはとっておき、自分の剣とした。その後、ハーゲンを捕らえたクリームヒルトは、バルムンクでハーゲンの首を刎ね、夫の復讐を果たした。
オペラ『ニーベルングの指環』の『ノートゥング(Nothung)』。
オペラ自体が北欧神話をベースとしているため、グラムとほとんど一緒です。
シグムンドが『ジークムント』、シグルズは『ジークフリード』に変わっていることぐらいか。
いろんな側面を持つ剣ですねぇ。
アニメ『蒼穹のフィフナー』で、人型兵器ファフナー・ノートゥングモデル『マークエルフ』として名前が流用されています。
あと、なにかあったかなぁ?
面白い説にオーディンが真の勇者を探すため、トリネコの樹(りんごの木という説もあります)バルムンクを突き刺し、『これを抜いた者を王と認める!』として、ジークムントを見出したとする話もある。
第1夜の『アーサー王伝説 (エクスカリバー)』と共通性を感じませんか?
竜殺しの剣 (ドラゴンスレイヤー)
どの話でも、シグルズ(ジークフリート)は竜を倒し、竜の返り血を浴びたことによって不死身となっています。弱点も同じく背中に木の葉(月桂樹)が付いたため、その部分のみ普通の人と同じ。
その剣は竜殺しの剣、ドラゴンスレイヤー、またはドラゴンキラーといってよいでしょう。
これといって特殊能力はないですねこの剣。
切れ味が鋭く、鉄より硬い竜の鱗ですら一撃で貫けることぐらいでしょうか。
まあ、それだけに流用はしやすいと思うのですが、流用されているのをあまり見かけません。
『ニーベルンゲンの歌』と『ニーベルングの指環』については、私の小説『天駆ける戦乙女の翼』の中の『戦乙女の補習授業 2時限目』にて、もう少し詳しくやっています。
興味のある人は一読してみてください。
次夜は『ニョルニル(Mjolnir)』。別名『トールハンマー』です。