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ALC0589⇔彼は気付いていました

「うぅ……飲み過ぎた……」


 頭を抱え目を覚ます。

 結局あのまま朝方まで宴会は延々と続き。

 ジュリアとルーリーはメイドに任せ早めに帰宅させ、眠りこけたケリーはメリウスさんに抱きかかえられ別荘に送還。

 アーネルは次の日も教会の仕事が入っている為、千鳥足で帰って行ったのはいいのだが……。


「水……」


 喉が焼ける様に熱い。

 アレだ。ルーファスがガンガンに進めてきたワインのせいだ。


 結局私、ルーファス、レミル、ゼギルの4人で朝まで馬鹿騒ぎをしたのだ。

 というかここは何処だ?

 ベッドの上……?

 はて……?


「ん……」


 声のしたほうに視線を向けるとそこには肌色のアレが。

 うん。

 肌色のアレが。

 あれれ……?


「……ああ、サナエか。おはよう。良く眠れたかい?」


 肌色の紳士、もとい全裸のルーファスが目を擦りながらも爽やかな笑顔でそう言う。

 うん。

 全裸のルーファスが。

 なんで同じベッドで目を擦りながら……。


「・・・」


「ん?」


「・・・」


「サナエ?」


 口をパクパクしたまま声が出ない私。

 え? なにこれ?

 何で全裸のルーファスが寝ているベッドで、私も一緒に横になっているの?


『失礼します、ルーファス様』


 扉の向こうからメリウスさんの声が聞こえて来る。

 まずい……!

 今、ドアを開けられたら……!


「レミル譲とゼギル殿は宴会場でそのまま寝ておりますが、サナエ譲のお姿が何処に……も……?」


「パクパク」


「失礼致しました」


 バタン、とドアを閉めそのまま何も無かった様に出て行ってしまったメリウスさん。


「ちょ、ちが、メリウスさあああああああああああああん! これは、違うのよおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」


 慌てて立ち上がりメリウスさんを全力で渾身の力を込めて追いかける私。


「あはは」


「『あはは』じゃねええええええええええええ!!!!」


 ドア付近で振り向き様にルーファスにそう叫ぶ私。

 なんだよあの余裕の笑みはっ!?

 いいから服を着ろよこの露出狂御曹司がっ!!


「メリウスさああああああああああああああああああん!!!」



 ――そして屋敷中に私の叫び声が木霊した訳で。




◆◇◆◇





「そういう事でしたか。私はまたてっきり……」


 談話室にそろった3人。

 私は二日酔い&叫びながら廊下を走ったせいで頭からソファに蹲ってしまっている格好。


「はは、だってそうだろう? 僕が服を着ていなくて、サナエだけが服を着ていたらおかしいと思わないか、メリウス」


 爽やかにそう言うルーファス。

 その爽やかさが今は私の頭痛の種なのだが。


「……ルーファス様の趣味なのかと、爺は疑いましたぞ」


「どんな趣味なのよそれええええええ!!! ……うっ……気持ち悪い……」


 咄嗟に叫んだせいでまた吐きそうになる私。

 駄目だ。今日は一日何も出来る気がしない。


「まあ、確かに僕も服を着たままってのも嫌いじゃないんだけど……。でも僕も驚いたよ。サナエ達を残して先に部屋で休ませて貰ったら、明け方サナエが僕のベッドに潜り込んで来るのだから」


「だから……! 覚えていないんだって……!」


 そう。

 私がルーファスの部屋のベッドに寝ていた理由。

 何故か私はルーファスが抜けた後、ゼギル、レミルとともに酒を酌み交わし。

 そしてトイレに向かった後、ルーファスの部屋に訪れ――。


 そこから記憶が無いのだ。


「ていうか私が酔っ払って寝ぼけてて部屋に入って来てベッドに……その……潜り込んで来た時に貴方は気付いていたんでしょう? ならどうしてその時に声を掛けてくれなかったのよ!」


「おや、どうして僕がそんなチャンスをわざわざ棒に振るような事をしなくてはいけないんだい? ふふ、可愛かったよ、サナエの寝顔が間近で見れて」


「ああ……駄目だ……こいつには何を言っても……」


 そのままソファにあるクッションに顔を埋めながらも頭を抱える私。

 いや普通起こすだろ!

 ルーファスが寝るときは裸で寝るという事は大分前に聞いた事があったから、そのベッドに私が潜り込んだら色々とまずいに決まっているだろ!

 ああ……全裸の男性と同じベッドで一夜を……。


「しかし不思議ですな。酔っ払っていたとはいえ、ルーファス様の部屋に向かわれたという事は、何かお話したい事があったのでは御座いませんか? サナエお嬢様?」


「え?」


「うん。僕もそう感じたよ。部屋に入ってくる時のサナエの顔は暗がりでも分かるくらいに落ち込んでいたし。だからこそ僕は何も言わずにいたんだけどね」


「あ……」


 私が酔った勢いでルーファスに相談したかった事。

 心の中に押し込めたままの、ずっとこの半年間仮面を被り続けていた感情。

 皆を利用して来た事。

 ケリー君をわざと一度殺し・・・・・・・、吸血鬼のイベントを進めた事。

 レミルを囮に使い、旅の話術士に隙を作らせた事。


 ――私がここまで、2周目を迎えていた・・・・・・・・・、という事。


 言わなくては。

 多分、私はずっとその事を考えていたのだ。

 打ち上げの最中もずっと。

 

 そして皆に。

 ルーファスに、ゼギルに、アーネルに、レミルに。

 ケリー君に、メリウスさんに、くまごろうに。


 心から、謝りたかったのだ――。



「ルーファス……! あのね……!」


 顔を上げ、ルーファスの目を見つめ切り出す私。


「知っていたよ」


「…………え?」


 爽やかな笑みが消え、真剣な表情で私の目を見返してくるルーファス。

 雰囲気を察してか、一礼をしたメリウスさんは談話室を後にする。


「君が何かを隠していた事は何となく分かっていた」


 彼はふぅ、と溜息を吐きながら深くソファに座り直す。


「だっておかしいだろう? いきなり初対面で『ハクナ族』の件を持ちかけて来て、僕ら伯爵家が『旅の話術士』に騙されていると告げたと思いきや、錬金店を開業し、瞬く間に人気店へと成長。更には『呪いの街』の住人に対する情報、鮮やかな解決。『民間薬』の急速な普及や『青の奇跡』の製造・流布。極めつけには『旅の話術士』の撃退」


 そこまで一気に話したルーファスはメリウスさんの淹れてくれた珈琲に口をつける。

 私は無言で彼の言葉を聞いている。


「そして『奴』との奇妙な会話。……そう。まるでこの対決が事前に決められていた・・・・・・・・・・かのような台詞を・・・・・・・・お互いに吐きながら・・・・・・・・・


 そして、静寂。

 彼は気付いている。

 今まで何度説明しても、私が『異界の人間』だと話しても理解出来なかった彼が。




「――サナエ。君は以前に、この世界を一度経験している・・・・・・・・、云わば『転生者』なんだね?」
















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