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ALC0000⇔まずはこの街一番の権力者の元を訪ねました

『じゃあそう言う事だから~! ぜひぜひ、《Alchemist Offline》の世界を十分に楽しんでチョンマゲ! また1年後に会うのを楽しみにしてるぜお嬢さんよぅ! へいへい! See you again!』


 テンションアゲアゲでそう言った女神は上空で霧散した。

 

 あの女神は何故いつもあんなに楽しそうなのだろう。

 しかしどんな質問にも答えられるという訳では無い様だった。

 聞きたい事は沢山あったが、殆どの質問は『え? なにそれ? 私わかんなーい』の一点張り。

 彼女もまた女神とは名ばかりのNPCに過ぎないと言う事なのだろう。

 当然、私と同じ『イレギュラー』である『旅の話術士』の事など一切質問には答えられない様だった。


「さて、と……」


 もう十分泣いた。

 そしてもう、泣かないと決めた。

 私のやるべき事は既に決まっている。


 私は両の頬をバシッと叩き、歩み始める。




・・・




『はい。どなたで御座いましょう?』


 大きな扉の向こう側から老紳士の返事が聞こえて来る。


「恐れ入ります。私、旅の錬金術師の『サナエ・クジハラ』と申します。訳あって、アルルハイド伯爵家のご子息である『ルーファス・アルルハイド』様にお話があり……」


 開いた扉の隙間からメリウスさんが顔を出す。

 私はまるで訪問販売でもしているかの様な錯覚に陥るが、作り笑いも不自然な行動も見せる事無く、落ち着いて用件を説明する。


「左様で御座いますか。それはそれは長旅、お疲れ様で御座います。ルーファス様はちょうど今しがた、遠征先からお帰りになられた所で御座いますので……」


 良かった。特に怪しまれなかった様だ。

 メリウスさんは私を屋敷に招き入れ、談話室で寛いでいるルーファスの元へと案内してくれた。


(……やっぱりこの街では『錬金術師』は尊敬されているんだわ……。これもレミルの努力の賜物なのかしらね……)


 さっそくレミルの事を思い出しうるっとなりそうなのを直前で堪える。

 駄目だ。今しがた『泣かない』と決意したばかりだと言うのに。


 長い長い渡り廊下を進み、私はルーファスの待つ談話室へと招かれる。





◆◇◆◇





「ふむ……。その話が本当ならば、僕達『伯爵家』は騙されていた、という事になるね」


 談話室でのルーファスとの会談。

 私は言葉を選び、矛盾が生じない程度の情報をルーファスに提供する。


「ええ。その辺りは世界政府が集めている『資料』を見てもらえばすぐに分る筈です。貴方でしたらその資料を集める事くらい、造作も無い事なのでしょう?」


 ルーファスが世界政府から直接指示を与えられるほどの人物だという事は既に知っている。

 そして、今現在、ルーファスを含めた伯爵家の人間が『旅の話術士』についての情報を一時的に・・・・忘れてしまっている・・・・・・・・・という事も。


(……これもきっと奴の『コード』のせいね……)


 旅の話術士は戦闘中に、何度も『コード』という技を繰り出して来た。

 あのチートを使えば一時的に自身に関する記憶を・・・・・・・・・忘れさせる・・・・・事だって容易な筈。

 効果範囲や効果人数がどれくらいなのかは分らないが、ハクナ族と伯爵家側との通訳を買って出た時だけでも誤魔化せれば、後はどうにでもなるのだろう。


「まあ、ね。メリウス。早速で悪いんだが、王宮に連絡してあの『話術士』に関する資料を集めて貰えるかな?」


 傍らで待機をしていたメリウスさんにそう指示を飛ばすルーファス。

 良かった。一応は信じてくれたみたいだ。

 ならば私はもう一押しをするのみ。


「有難う御座います。それと、私の『情報』が真実だと判明した後で宜しいのですが……」


 これは賭けだ。

 あまりにも『ぶしつけなお願い』。

 しかし、私はルーファスの性格を知っている。

 そして『前回』での彼の『気持ち』も。


 今も尚、いきなり屋敷に押しかけ、これと言った根拠も示せていない私の話を真剣に聞いてくれているルーファス。

 当然王宮に問い合わせればすぐに『真実』だと判明するのだが、そもそも普通の伯爵家の人間が私の話を鵜呑みにするだろうか?

 いくら錬金術師とは言え、実績も無ければレベルもまだ『1』なのだ。

 それでも私の話をしっかりと聞き、目も逸らさずに受け止めてくれるルーファス。

 そして私は『その事』を知っていて、彼を利用しようとしている。


(……ふふ……まるで『悪女』ね私……。彼の『気持ち』に気付いていて、彼を利用する悪い女……)


 自嘲気味にそう笑う。


「?? 何が可笑しいんだい?」


 私の笑みに気付いたルーファスは怪訝な様子でそう尋ねる。

 そして再度、私は仮面を被りこう答える。


「いえ、何でも御座いませんわ。で、どうでしょう? 提案はお飲み頂けますか?」


 少し喉が渇いた私はメリウスさんが淹れてくれた紅茶に手を伸ばす。

 彼の淹れてくれるお茶はアーネルが淹れてくれるお茶と肩を並べるほどに、上品で良い香りがする。


「ああ。もしもその情報が正しければ、君は伯爵家の『名誉』を守り、ハクナ族に対する『弾圧』を解決する事になるのだからね。空いている家を・・・・・・・貸すくらいは・・・・・・造作も無い事さ。君みたいな博識な錬金術師が僕らの町で開業してくれる事になるのであれば、『彼女』の負担もかなり減るのだろうしね」


 ルーファスは爽やかな笑顔でそう言った。

 『彼女』とは多分レミルの事を指しているのだろう。

 この広い街でたった一人の錬金術師。

 私が店番をするまでは殆ど一般客などは来なかったが、オーダーメイドの注文はひっきりなしに来ていたのを思い出す。

 ルーファスの言うとおり、私がこの街で『錬金店』を開業すればレミルの負担もかなり減るのだろう。

 

 そう。

 既に私は自身の『ステータス』を確認済みだった。

 もう私は【SUB】では無いのだ。

 これからはレミルに頼る事も無く、自分の力で錬金術を唱える事が出来る。


 まずは地道に初級の錬金術を唱え『ALC』の熟練度を上げて行く事が急務になる。

 既に『LUC』には初期設定でポイントを全て振り込んである。

 余程のことが無い限り、当分は錬金を失敗する事はありえないだろう。


 そして資金を貯め、装備を整える。

 特に腕輪の性能は錬金術師にとっては最重要装備となるので積極的に上げて行く。

 ALCの数値が上がれば『上級錬金術』で更に性能の良い腕輪も召喚する事が出来る筈。

 それを鍛冶屋に持って行き、素材と共に強化する。


 その為にはモンスターを狩らなければならない。

 レベル上げも必要だし、民間薬を調剤するための素材も集めなければならない。

 そしてある程度レベルがあがったら『呪いの街』に出向き、『吸血鬼』の問題を解決する。

 その為にもルーファスやゼギル、アーネルとも仲良くなっておかなければならない。

 伯爵家側と教会側に強いパイプがあったからこそ『吸血鬼』の問題は解決出来たのだ。

 今すぐに解決は無理だ。まだ時期が早すぎる。

 今、私が出来る事、そしてやるべき事は……。




 私は再度紅茶に口を付けながら、脳内をフル回転し、今後の計画とイベントとの擦り合わせを熟考する。



















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