ALC0000⇔女神に質問したら予想以上の答えが返って来ました
『まずはあなたのお名前を教えてください』
私は頭の中でイメージする。
『サナエ・クジハラ』
空間に大きく名前が入力され、次の画面へ移行する。
『次にあなたの種族を選択してください』
①人間族
②エルフ族
③ドワーフ族
④ゴブリン族
⑤獣人族
……これは以前には選択出来なかった項目だ。
私は当然①を選択する。
『人間族(女)』
空間にそう入力される。
性別に関しては選択肢は無いらしい。
これは前回も無かったので取り敢えず気にはならなかった。
『次にあなたの職業を選択してください』
1.戦闘職
①剣闘士
②双剣士
③盾護士
④拳闘士
⑤魔導士
⑥治癒士
2.生産職
①洋裁師
②鍛冶師
③錬金術師
3.特殊職
①話術士
②手品師
③占い師
これも前回は飛ばされてしまった項目だ。
私は思案する。
理想は自分一人でもレベル上げが出来る『戦闘職』だろう。
しかし、今回は『失敗』したくない。
試した事のない職業を選んで自滅するよりは、既に経験済みの職業を選んだ方が極めるのは容易いだろう。
それに今回の私の『作戦』には錬金術が欠かせない要素となる筈。
私は迷う事無く2.生産職 → 錬金術師を選択する。
『錬金術師』
『名前:サナエ・クジハラ
種族:人間族(女)
職業:錬金術師
以上でよろしいでしょうか?』
私は『はい』を選択し、次の画面へと進む。
・・・
『では次に初期パラメータの設定に移ります。ボーナスポイントを振り分けてください〔ポイント:100〕』
……これだ。
前回はここで大ぽかをやらかしたのだ。
だがそれも仕方の無い事だった。
事前にステータスについての説明が全くと言ってよいほど無かったのだから。
『HP/SP/MP/STR/VIT/DEX/AGI/INT/HIT/LUC』
私は思案する。
錬金術に関係するステータスは『MED』と『LUC』が錬金成功率、『ALC』が錬金熟練度、の3つ。
あとは生産職全般に言える『HP』『VIT』の低さのカバーくらいだろうか。
しかし私は既に振り分けを決めている。
『LUC/100
以上のボーナスポイントの振り分けでよろしいでしょうか?』
私は全てのボーナスポイントを『LUC』に極振りし『はい』を選択する。
『HP』や『VIT』の数値など、『奴』にとったら全く関係の無い数値だ。
『奴』の使うあの『コード』の前ではそれらも完全に無力化されるであろう。
ならば錬金術の成功率に深く関わる『LUC』にのみポイントを振り込めば良い。
大丈夫。
今回のこの設定の流れならば、私は……。
『次に初期装備を選んでください』
『右手/左手/頭/胴/腰/足/アクセサリー1/アクセサリー2/アクセサリー3』
それぞれの装備のリストがずらっと並べられる。
しかしどれも初期装備でしかないので性能はさほど変わらない。
私は前回と同じ装備を選択し『決定』を押す。
(……アクセサリーの1だけは『薬学全書』で固定か……。やっぱり何か『意味』があるんだわ……。この辞書には……)
錬金術を唱える事により上下する『MED』と『ALC』。
そしてその数値に連動するように『薬学全書』の内容も変化する。
しかし、それはまだ私自身、内容の解明までは至っていないので保留する。
でも何故か、『奴』ならこの書物の『秘密』も知っていそうな気がした。
理由は分らないが、私の『勘』がそう告げていた。
『以上で初期設定は終了となります。それでは《Alchemist Online》の世界を十分に堪能しお楽しみください』
私は大きく息を吐き、そして強く目を瞑る。
◆◇◆◇
目を開けると見慣れた街の風景が眼前に広がった。
「あ……」
その光景を見た瞬間、私の瞳から大量の涙が溢れ出て来た。
(……戻って……来たんだ……)
体感時間にしてたった数十分程度の『再設定』。
しかし、あの皆の必死な形相が、私を助けようと躍起になっている彼らの行動が、脳内に再生される。
「う……うう……」
私はそのまま魔法陣の上にしゃがみ込み嗚咽を漏らし涙を流す。
まるでダムが決壊したかの如く、涙が大量に溢れ出す。
(……皆……本当にゴメン……私……また『最初から』になっちゃった……)
覚悟していたつもりだが、心が折れそうになる。
この半年間で培った皆の『記憶』はもう既に無い。
しかし、私は全てを『覚えて』いる。
楽しかった事も。
悔しかった事も。
喧嘩ばかりして、でもすぐに仲直りして、互いに認め合って、心から笑い合って……。
だが、私は『奴』を倒す為にまた彼らを頼らなければならない。
今度は『知らないふり』をして。
『嘘』をつきながら、『仮面』を被りながら――。
――私は『詐欺師』に対抗する為に『嘘つき』にならなければいけないのだ。
孤独感が私を襲う。
私はただ、その場で蹲り、泣き腫らす。
今はただ、そうしていたかった。
・・・
どれくらいそうしていただろう。
屈み込んでいた私の視線に何か動く物が見えた。
(……そうか……もうそんなに時間が経過したのか……)
足元の影がせわしなく動いている。
上空を見上げると異常な速さで雲が移動しているのが見える。
そしてその雲が徐々に一箇所に集まり出し、巨大な人の形を象って行く。
『ようこそ~♪ 《Alchemist Offline》へ~♪』
上空にはあの『女神』が出現していた。
『ええと~、あったこれこれ……。あー、サナエ・クジハラさん、かな。あ、いたいた。やっほー』
私は泣き腫らしたままの顔で女神を見上げる。
『あ……あれ? 泣いてる……? え? 私、何かしたっけ……? え、え~と……取り敢えず……。ほ、本日は《Alchemist Online》のオフラインバージョンを開始頂き真に真に、ま・こ・と・に! 有難うございまーす!』
「……」
『……なんだろう。私、凄く場違いな気が……。いや、そんな事ないもん! 私は女神! この《グランドレグザイム》の唯一神にして《レグザイム教》の教祖なのよ! こんな小娘の一人や二人の泣き腫らした顔を向けられたからって、気にする事なんか……!』
「……ねえ、女神さん。『大魔王』を倒したら、私はどうなるの?」
『え? そりゃあ大魔王を倒しええええええええええ!!? 私まだそこまで説明していないんですけどっ!! え? なんで先回り!? 貴女何者っ!?』
上空でせわしなく動き回る女神。
「いいから答えて。大魔王を倒し、この世界を救ったら、この世界の『救世主』として崇められるだけなの? 本当にそれだけ?」
『あ、いや、え? そんな事聞いてどうするの? ていうかもう説明の順番がごちゃごちゃになっちゃって、私、超困るんですけど……。せっかく噛まない様に何度も原稿読んで練習してきたってのに……』
上空でうな垂れる巨大な女神。
「答えなさい」
『う……。はい……。えと、1年後に起こる『大魔王討伐イベント』……あ、イベントって言っちゃった……。……こほん、『大魔王』を倒し、世界を救った後、貴女には2つの選択肢が与えられるのよ』
「選択肢?」
『ええ。一つはこのままこの『オフライン』の平和になった世界できゃっきゃうふふと生活して貰う事。そしてもう一つは『オンライン』の世界に飛んで、様々なプレイヤーとの頭脳戦やらPK合戦やらを楽しみ……』
女神が長々と説明を続けるが、既に私の耳には届いていない。
(……大魔王を倒すと……『オンライン』の世界に行ける……?)
心臓の鼓動が早まる。
予想していた以上の答えが返って来てしまった。
1年後、大魔王を倒せば、庵達に会える……?
しかし、その為には半年後の『旅の話術士の捜索』のイベントを確実にクリアしなければならない。
奴はまた現れるだろうか?
……いや、確実に現れるだろう。
多分、奴もこの強制イベントは無視が出来ない筈。
そう。きっと『奴』は――。
――『旅の話術士』は、私や庵達と同じく、現実の世界から飛ばされて来た人間なのだから。
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NAME サナエ・クジハラ/錬金術師
LV 1
HP 1000/1000
SP 200/200
MP 200/200
STR 7
ATK 23
VIT 6
DEF 21
DEX 18
AGI 14
INT 31
MAT 54
MDE 65
HIT 9
LUC 255★
MED 1000
ALC 0
右手/闇の腕輪〔E-〕
左手/光の腕輪〔E-〕
頭/錬金術師の髪留め〔D-〕
胴/錬金術師の服〔D-〕
腰/錬金術師のスカート〔E+〕
足/錬金術師の靴〔E-〕
アクセサリー①/薬学全書
アクセサリー②/なし
アクセサリー③/なし
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