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ALC0043⇔お願いだから服を着てからドアを開けてください

「やあ、サナエ。今日もレミルのお使いかい?」


 うん。今日もまた爽やかな笑顔ですね、ルーファスさん。


「・・・」


「? なんだい? そんな所に突っ立っていないで、入ったらどうかな?」


 うん。今日もまた爽やかな笑顔ですけど、何故に全裸なのですか?


「・・・」


「? ……ああ、ごめんごめん。ちょうど今シャワーから上がった所だったから。すぐに服を着るよ」


 ルーファスはバスタオルでその綺麗な長い金髪を拭きながらクローゼットを開ける。

 いやいやいや。

 私が聞きたいのは、何故に全裸なのに自室のドアを何の躊躇も無く開けたのですかという部分でありましてですね。

 事前に声を掛けたから私だってすぐに気付いた筈ですよねルーファスさんなのになんで開けたのですか爽やかな笑顔で。

 

「・・・」


「うーん。ねえ、サナエ。今日はどの服が良いと思う? 僕はこの黒の服が良いと思うのだけれど」


 私に背を向けながらそう尋ねるルーファスさん。

 うん。お尻が引き締まってて凄く良い馬鹿ああああああああ!!!!!


「何でも良いからさっさと服着ろこの変態がああああああああああああああ!!!!!」




▲▽▲▽▲▽





「メリウスさん! この変態金髪紳士をきちんと教育してやって下さいよ! レディを全裸で爽やかな笑顔で部屋に招き入れるってどういう神経してるんですかこの人っ!!」


 初老の執事――メリウス・バイデルムさんに詰め寄る私。

 男の全裸を見るのは何ヶ月か前にいおりが酔っ払って裸踊りをした時以来だ。

 どうしてどの世界でも金髪野朗は裸になりたがる習性があるのだろうか。

 誰か論文でも発表して欲しいものだ。


「大変申し訳御座いませんでした、サナエお嬢様。ルーファス様。レディの前で裸になられるのは初夜の時と相場が決まっておりましてな」


「ああ、そうだったね。すまないね、サナエ」


「そゆこと言ってんじゃねえっつの!! そしてなんでメリウスさんはそこでお腹押さえて笑いを堪えているんですか! 自分でボケておいて自分で爆笑しないで下さいよぉ!!」


 駄目だ。こいつら完全に私を笑い者にして楽しんでいやがる。

 てかジジイ、年考えろっつの!

 だからこの屋敷に来るのは嫌なんだよもう……。


「で? 今日はなんだい? まさかもう『血盟剣ブラッドグラム』が完成した訳じゃないのだろう?」


 ルーファスの顔から笑みが消え、真面目な表情に変わる。

 こうコロコロと表情を変えられるとやり難いったらありゃしない。


「そのまさかよ。はい、これ」


 私は布で巻かれた剣をルーファスに渡す。


「おお! この血塗られた赤の輝きはまさしく……!」


 メリウスさんが感嘆の声を上げる。



『血盟剣ブラッドグラム』


 古より伝わる処刑人ブラッドグラムが、生涯に渡り使用していたとされる、咎人を斬首する為だけに作られた呪われた魔剣。

 錬金する為にはかなりの『ALC』を必要とする最上級の召喚錬金用の武器らしい。

 さっきレミルに聞いたばかりの豆知識なんだけど……。


「私もこの1ヶ月間、結構『ALC』が溜まって来たからさ。レミルの『ALC』だけじゃ足りなかったんだけど、『共同錬金』してギリギリ数値が達したから、今朝錬金が成功したって訳」


 得意げに話す私。

 ……手を繋いでいただけなんだけど。


「流石はレミルとサナエだね。こんなに早く血盟剣が手に入るとは思ってもみなかったよ」


 ルーファスはその赤い刀身を真剣な眼差しで見ながらそう言った。

 くそ、ちょっと格好いいなルーファス……。

 でも惚れない。私は変態にだけは惚れないから。マジ勘弁。


「でも先月、確か『黒剣』を納品したばかりだってレミルに聞いてたけど。二本も剣を注文して一体どう使うつもりなの?」


「はは、面白い事を言うなサナエは。僕は『双剣士ツインセイバー』だよ? 剣が二本なければ戦闘力が半減してしまうじゃないか」


「え? そんな『職業』もあるんだ」


 なるほど『双剣士ツインセイバー』か。

 二刀流なら剣を二本注文したって不思議じゃ無いか。


「ルーファス様。さすれば早急に『例の案件』を」


「いいや、まだそれは早いよ。『黒剣』は使いこなせては来たけど、この『血盟剣』はまだだ。二刀同時に扱ったら、また使い心地も変わって来るかも知れない。取り敢えずは手頃なクエストでも受けて感触を確かめてからでないと」


「??」


 例の案件?

 何かキナ臭いわね……。

 いや、それよりも。


「ねえ、ルーファス。貴方今、手頃なクエストを探してるって言ったわよね」


 これはイケるやも知れん。


「? ああ。『黒剣』と『血盟剣』。この二つを使って何処までやれるのかを見定めるつもりだけど?」


「なら私と一緒に『採集』に行って貰えないかしら。報酬は……期待しないで貰いたいのだけれど」


 貰ったお給料では確実に足りないだろう。

 顔見知りって事でお願いすればツケとか効くのかしら……。


「へぇ……。サナエが『採集』に……。一体『何を』するつもりだい?」


 敢えて『何を』の部分を強調するルーファス。

 こういう所は勘が良いのよね。

 まあ、話が早くて助かるんだけど。


「まあ、簡単に言えば『薬剤の原料集め』と言った所かしらね」


「ほう……『やくざい』とは……何か新しい錬金素材か何かで?」


 眉を吊り上げ興味深々な様子のメリウスさん。


「違うよ、メリウス。サナエの『それ』は、きっと、もっと凄い『何か』さ」


 ルーファスが私の代わりに答える。

 いや、凄いと言うか……別に大したものを探しに行く訳では……。


「……成程。先の『ハクナ族』の一件でご活躍された『異界の知識』という奴ですかな。これは是非期待させて頂かねばなりますまい」


「いや、別にそんな……」


 何だか話が大きくなりつつある気がする……。

 あれ? ルーファスに頼んだのは失敗だったか……?


「ちょうど昨日ゼギルも戻った事だし、僕とゼギル、そして教会のアーネルも誘って四人で向うっていうのはどうだい、サナエ?」


 アーネル・ヴァイオレット。

 綺麗な緑色の長い髪が特徴のおっとり系美女って感じの治癒士ヒーラーだ。

 良くうちの店にも『解呪符』や『解死符』といった特殊な錬金アイテムを買いに来るお得意様でもある。


「て、『ゼギル』!? なんであいつまで……」


「ふふ、でももう仲直りは済ませたんだろう?」


「あ……」


 ……やられた。

 ゼギルが言っていた『だから謝るのなんて嫌だって……』というのはそういう意味か。

 ルーファスめ、余計な真似を……。


「何やら爺もワクワクして来ましたな。どれ、ならば私もご一緒させ」


「爺は留守番を」「メリウスさんは要らないです」


「……ですな」



 明らかに落胆しているメリウスさんを尻目に、私達は屋敷を後にする。




 ……報酬、ちょっとはまけてくれるかな……。



















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