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ALC0038⇔ちょっとだけ街の外に出てみようかと考えますた

「にまぁ~。にまにまぁ~」


 私の顔はもはや人間のそれを超越したデレ顔と化している。


「……気持ち悪いわね」


 物凄く引いた顔で私を見るレミルとかいう錬金術師がいたが、今の私には何も見えない聞こえない。


「キュ?」


「きゃあああああ!/// 『キュ?』だってええええええ!//// 可愛いよぅ~!///」


「キュキュキュゥ~」


 つい抱き締めて頬ずりしてしまう私。

 どうしよう、可愛すぐる。

 ていうか名前何にしよう。

 ぽこちゃん? たぬきちろう? やん、可愛い///


「……分ったから。……で? なんか検証してたんじゃないの? サナエ」


「・・・。あ、忘れてた」


「まったく……」


 私は今一度ウインドウを出現させ、ステータスを確認する。




==========



NAME サナエ・クジハラ

LV 1

HP 1000/1000

SP 200/200

MP 1200/1200

STR 7

ATK 23

VIT 12

DEF 31

DEX 29

AGI 14

INT 108

MAT 126

MDE 154

HIT 9

LUC 15

MED 962

ALC 38



==========




「えと……『ALC』は……38か」


 テーブルに置いてある『薬学全書』のページを捲る。


「やっぱり……。ほら見て、レミル。さっきは30ページまでしか錬金レシピが載ってなかったのに、今は38ページまでレシピが載ってる」


「あら、ホントねぇ……。どうしてかしら……? というか、サナエはその本……『薬学全書』だっけ? それは何処で手に入れた物なの?」


「最初から持ってますた」


「……意味分らない」


 ……ですよねー。

 だって私が本当はこの世界の住人じゃなくて、別の世界から来たって言っても信じてくれないし。


「キュゥ」


「ねえ、そんな事よりこのタヌキちゃんの名前、何にしようか~?」


「『そんな事』って……。貴女が言い出したんでしょうが……まったくもう……」


 溜息を吐きながらもレミルは笑っている。

 本当はレミルもこの子が可愛くて仕方無いのだろうと思う。

 だって口では何だかんだと言っているが、さっきから頬が綻んでいてちょっとキモいもん。


「名前は貴女が決めなさい。だって貴女の為に錬金召喚させた子だもの。それにこの子はもう、貴女に懐いているみたいだし」


「キュゥ」


 タヌキの赤ちゃんは私の頬をぺロリと舐め上げる。

 私はもう、それだけで昇天してしまいそうになる。

 可愛い、可愛すぐる……!


「よし! 決めた! 今日から君は『くまごろう』だっ!!」


「キュ?」


「……くま、ごろう?」


「ね? 可愛いでしょう? 『くまごろう』! なんかこう、愛着が出るというか、モコモコ感が半端ない感じの名前でしょう?」


 くまごろう。

 うん。凄く良い。くまごろう。


「……そう、かな。ははは……」


 何だか乾いた笑いで場を濁すレミル。

 良いんだよ? そんなに恥ずかしがらないで、もっと喜んでくれても?


「キュキュゥ~」


「ほら! くまごろうも喜んでくれてるじゃん! ね~? くまごろう~?」


「キュン」


 私は何度もくまごろうを頬ずりする。

 今日ほどめでたい日は無い。

 夕飯はうんと豪勢な物を作るとしよう。


「はぁ……まあいいわ。私ちょっとこれから用事あるから、また店番頼んでも良いかしら」


「くまごろう~///」


「聞けやおい」



 その後何度もレミルを無視した私の頭には。

 二つくらいの大きなコブが出来てしまっておりましたとさ。





◆◇◆◇





 レミルが外出してから私は残りの洗濯物を終え、部屋の掃除を済まし、くまごろうにミルクをあげる。

 そう言えば『錬金獣』が何なのかレミルに聞くのを忘れていた事を思い出す。


「あ、そっか。確か『薬学全書』の……何ページだっけ」


 テーブルに置いてある薬学全書をパラパラと捲り、目的のページを発見する私。



『錬金リスト NO.25 【錬金獣】 ALC170 


 上級錬金術師にしか使えない召喚錬金により、魔法陣より現代に召喚される聖獣。

 召喚した術師の錬度により具現化される聖獣の姿は千差万別。

 また、具現化された姿により聖獣が持つ能力も様々である。

 元は別世界の神とも噂される聖獣であるが、詳細は不明。

 寿命は術者の寿命と同義。また、術者が死亡すると聖獣もまた消滅する。     』




「へぇ……『聖獣』かぁ。『寿命は術者と同義』って事は何十年も生きるって事か……」


 でもこの場合は『術者』とはきっとレミルの事を指すのだろう。

 レミルが死ねば、聖獣も死ぬ。

 よし。レミルには永遠に生きていて貰おう。


「キュゥ」


「ん? あ、もう全部飲んだの? 偉いね~/// 可愛いねぇ~///」


「キュウン」


 首を撫でてあげるとゴロゴロと可愛い声を出すくまごろう。

 しばらく撫でていると眠くなったらしく、その場で丸く包まってしまった。

 まるで黒いモコモコしたボールみたい。


「さて、と……。商品の整理でもすっかぁ」


 ここでずっとくまごろうの寝姿を眺めていたいがそうはいかない。

 私は重い腰を上げリビングから店へと戻る。




・・・




 レミル錬金店には様々な商品が置いてある。

 通常では手に入らない武器や防具、アクセサリー類。

 回復薬や強化薬、装備を強化する為の素材なんかも扱っている。

 言ってしまえば何でも屋だ。何だか良く分らない目玉が入った瓶まで置いてあるんだし。


 これらは全てレミルが錬金した物。

 だが基本的にここに置いてある物は、素材から錬金する『基本錬金術』で作り出した物がほとんどだ。

 魔法陣を使い錬金する『召喚錬金』に代表される『上級錬金術』で錬金する物の殆どはオーダーメイド品である。

 錬金する対象の『ALC』が高いほど『LUC』や『腕輪』の補正も掛かり辛くなり失敗しやすいらしい。

 よってオーダーメイド品はかなり高価なお値段で取引される。


「あーあ……。私も何か錬金出来るようになりたいなぁ……。せっかく異世界に飛んで来て何も作れないなんて……」


 私は何もやりたくて家政婦をやっている訳ではないのだ。

 錬金術師としての欠陥品、【SUB】の称号が付いてしまっているから仕方無く我慢してやっているのだよ。

 ホントついてないわ私。

 自分だけ『オフライン』の世界に飛ばされるわ、初期設定で爆死するわ、仕舞いには『欠陥品』扱いされるわ……。


「でも成功率がほぼ0%じゃ、何したって無意味よね……。失敗して『ALC』が下がっちゃったらレミルに怒られるだけだし……」


 もしも勝手に錬金を試して『ALC』を勝手に落としでもしたら、今度こそこの店を追い出されるかもしれない。

 流石にそんな博打を打ってまで、この異世界でのギリギリの生活を台無しにするほど私はお馬鹿さんでは無い。

 それに今は愛しのくまごろうもいる。

 私の為にくまごろうを召喚してプレゼントしてくれたレミルを裏切る訳にもいかないし……。


「何か薬とか調剤道具があればなぁ……。この世界には『医療』も『薬剤』も無いのだし、結構人の役に立つ仕事とか出来そうな気がするんだけどなぁ……」


 今朝も『口内炎』が酷いって言う相談を持ってきたお客さんがいたけど、何処に行ってもそんな『状態異常回復薬』は売っていなくて、錬金術でどうにかならないかと言われたのだけれど。

 流石にケナログやデキサメタゾンはこの世界には存在しないだろうから、『ストレス発散や睡眠の改善をして、まんべん無く野菜や果物を食べてください』としかアドバイス出来なかったし。


「ん……? あ、いやでも『はちみつ』とかでも代用出来るんだったか……? そういや、何かそんな感じの内容が……」


 私は気になったので『薬学全書』を取りにリビングへと戻る。

 何ページか捲ってみると、確かに『口内炎の治療法』の部分に『薬が用意出来ない場合』との項目があった。


「あ、やっぱり。『はちみつは古くから口内炎に対し使われている民間療法の一つで、殺菌・消炎作用と共に栄養素も豊富に含まれている』って書いてある……。後で時間あったらはちみつ持って行ってあげようかな……」


 意外に役に立った『薬学全書』。

 そうか。薬が無ければ『薬の代わりとなる物』を探せば良いのだ。

 街の外に行けば葛の根や生姜、アロエなんかも手に入るかもしれない。

 あまり作用の強いものは危険かもしれないが、ある程度の民間療法で使われている『薬になるもの』だったら私でも処方出来るかもしれないし。

 街の市場で売っていれば良いのだが、何故かこの手の物は何処も扱っていない様だったし……。


「……てことはあれか。とうとう私も街の外に出て、モンスターから逃げ回りながら『採集』をせねばならんという事か……」


 どうしよう。もの凄く怖い。

 でもこのままじゃ私、一生レミルにおんぶに抱っこだとも思う。

 それにこの世界では『医療』が驚くべき程に進んでいない。

 いや、進んでいないのでは無い。『概念そのもの』が存在しないのだ。

 まるで何かのプログラムで、その部分に関しては『無知』であるかのように設定されている様な――。


「『Alchemist Online』……。ここは『ゲームの世界』、か……」


 ふといおり達の事を思う。

 彼らもまた、同じ様な思いをしているのだろうか。

 『オンラインの世界』ではどうなっているのだろう。

 やはり世界中の数万のログインプレーヤーが閉じ込められてしまっているのだろうか。

 せめて、私の様に一人で悩む状況では無く、みんなで協力して脱出方法を探して欲しい。



 そしていつか笑って話せるだろうか。


 


 あの時の、4人ではしゃいでいた学生時代の時の様に――。



















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