痩せるクスリ
掲載日:2026/04/07
博士は、画期的な薬を開発した。
飲むだけで痩せる薬である。
仕組みは単純だった。
味覚を遮断し、食べる楽しみをなくす。
結果として、食事量が減るという理屈だ。
臨床試験の前に、博士は考えた。
「まずは自分で確かめるべきだろう」
薬を飲んだ。
その日から、すべての味が消えた。
甘味も、塩味も、何も感じない。
数日後。
博士は気づいた。
食事の時間が、やけに長くなっている。
満足感がないため、いつまでも食べ続けてしまうのだ。
やがて体重計の数字は、ゆっくりと増え始めた。
博士は記録を修正した。
「本薬品は、食欲の抑制には寄与しない。
むしろ」
少し考え、こう書き加えた。
「対象を、より効率的に太らせる可能性がある」




