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過去と現在が、同じ場所に立つ
校舎裏。
人通りの少ない場所。
えみるは、しばらく黙ったまま、空を見ていた。
「……急に転校してきて、ごめん」
「なんで……今なの?」
問いかける声が、震える。
「ずっと、戻れなかった」
えみるは、ゆっくりと私を見る。
「喧嘩したまま、離れたでしょ。
あのまま、咲に会うの、怖くて」
胸が、きゅっと縮む。
「私も……」
続けようとして、言葉が詰まる。
そのとき。
「咲?」
振り返ると、
そこに凪が立っていた。
驚いたように、
そして――少し警戒したように、えみるを見る。
「その人……」
「……昔の友達」
私がそう言うと、
えみるは一歩前に出て、丁寧に頭を下げた。
「齋藤えみるです。
……咲の、昔の幼なじみ」
凪の表情が、わずかに強張る。
三人の間に、沈黙が落ちる。
過去。
現在。
そして、これから。
「……咲」
凪が、静かに言った。
「帰ろ」
私は、凪を見る。
そして、えみるを見る。
選べない。
まだ。
「……ごめん。今日は」
えみるは、少し寂しそうに笑った。
「いいよ。
また、話せるから」
その言葉が、
未来なのか、
それとも過去への引き戻しなのか――
私には、まだ分からなかった。
ただ一つ確かなのは。
この三人の関係は、
もう“静かなまま”ではいられない、ということ。




