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昔話オールスター集合

桃とお椀と段ボールと、

何かよく分からない舟の集合体は、

相変わらず川を流れていた。


どんぶらこ。

……というより、ずるずる。


ロープがきしむ。


一寸法師は必死に櫂を握っていた。


「お、おかしいですね……

 理論上、こんなに引っ張られるはずでは……」


「大丈夫大丈夫」


美佳は桃の縁で足をぶらぶらさせる。


「浮いてるし、進んでるし。成功じゃん」


「成功の定義が広すぎませんか!?」


そのとき。


川岸の向こうから、

地面を揺らす足音が聞こえた。


「おーい!」


岩場を踏み砕くように現れたのは、

丸太のような腕の少年だった。


斧を肩に担ぎ、

熊を連れている。


「なんだこれ!

 すげーの流れてきたぞ!」


美佳が目を輝かせる。


「あ、来た」


「来たって何!?」


「力枠」


即答だった。


「君、金太郎でしょ?」


「え?

 う、うん?」


「じゃあ乗って」


「え?」


説明はそれだけだった。


次の瞬間、

金太郎は熊ごと舟に乗っていた。


舟が、沈みかけた。


「……あ、ちょっと待って」


美佳が顎に手を当てる。


「重いの前ね。

 後ろだと引きずる」


配置が変えられた。


誰も逆らえなかった。



---


しばらくして。


今度は、

川面に妙な“箱”が浮かんできた。


「……あれ?」


美佳が指をさす。


「箱?」


「箱だね」


近づくと、

立派な葛籠だった。


「それは……開けては……」


よぼよぼの老人が、

必死に声を上げる。


「開けると、

 取り返しが――」


「大丈夫大丈夫」


美佳は即答した。


「舟にするだけだから」


「……は?」


次の瞬間。


葛籠は開けられ、

老人は一気に老けた。


そして。


葛籣は、浮いた。


「ほら、舟増えた」


「……人生とは……」


「はいはい、座ってて。

 落ちるよ」


浦島太郎は、

静かに被害者枠に収まった。



---


さらに進む。


空気が変わる。


夜でもないのに、

月の気配がする。


川辺に、

一人の姫が立っていた。


白く、静かで、

まっすぐこちらを見ている。


美佳が、手を振った。


「やっほー」


「……」


姫は一瞬だけ目を伏せ、

それから舟を見た。


「……随分と、

 賑やかな旅ですね」


「うん」


美佳は笑う。


「今ちょうど盛り上がってるとこ」


姫は何も言わず、

ふわりと舟に乗った。


誰も止めなかった。


止められなかった。


一寸法師が小声で言う。


「……あの方、

 天の――」


「しっ」


エルフが制した。


空が、

ほんの一瞬だけ遠くで軋んだ。



---


美佳は満足そうに頷く。


「よし」


「何がよしなんですか……」


「役割、揃った」


金太郎=力

一寸法師=操縦

浦島太郎=被害

かぐや姫=静かに火をくべる人


説明はしない。


する必要もない。


舟は、

さらに重く、

さらに不安定になった。


だが。


誰も降りなかった。



---


――こうして。


昔話は、

「討伐」ではなく、

「集合写真」になった。



暴走超特急・美佳、

まだ増結中。

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