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ポーションは飲み物とは限らない

翌日。


受付嬢の紹介で合流したプリーストは、


一行をダンジョンの奥でも、神殿でもなく――

焚き火の前へと連れて行った。


「ここで休憩します」


そう言って、彼女は地面に腰を下ろす。


焚き火の火は、ちょうど落ち着いていた。


強すぎず、弱すぎず。

夜の空気に、穏やかな温度を残す程度。


その前で、プリーストは――

鍋ではなく、なぜか木の器を並べていた。


弓勇者が、少し距離を取ったまま首を傾げる。


「……回復、するんだよね?」


「しますよ」


即答だった。


迷いも、含みもない。


プリーストは淡々と、器を一つずつ確認していく。

その手つきは、祈りというより――

調理に近い。


「飲む、必要はありません」


そう言って、彼女は回復薬の小瓶を取り出した。


蓋を開ける。

だが、そのまま飲ませる気配はない。


代わりに、木の器へと少量ずつ注いでいく。


「……え?」


弓勇者が思わず声を漏らす。


美佳は、興味深そうに身を乗り出した。


「なにそれ」


プリーストは一瞬だけ考え、

それから、いつもの真顔で答えた。


「回復薬の素材は、もともと栄養価が高いです」


器の一つを指さす。


「こちらは、回復草を抽出して冷却したもの」


ぷるん、と揺れる半透明の層。


「精神安定作用もあります」


次の器。


「こちらは、魔力果実を潰して泡立てたもの」


淡い色の、やわらかな層。


「魔力回復と、集中力向上」


さらに上から、白い層を重ねる。


「聖水を攪拌したものです」


「……」


弓勇者は、言葉を失っていた。


美佳は、器を覗き込みながら言う。


「……これ、パフェじゃない?」


プリーストは、首を振る。


「違います」


間髪入れず。


「回復用摂取物です」


完成したそれは、


明らかに――

映えていた。


層は美しく、淡く光り、

焚き火の火を受けてきらきらと揺れる。


弓勇者は、恐る恐るスプーンを取る。


「……一応、祈ってから?」


「不要です」


再び即答。


覚悟を決めて、一口。


「……あ」


思わず、声が漏れた。


続けてもう一口。


「……体、軽い」


美佳は、迷わず食べ始める。


「おいしいね」


あっさりと。


弓勇者は、自分の感覚を確かめるように肩を回す。


傷の違和感が、ない。

疲労が、抜けている。


「……回復してる」


プリーストは、不安そうに二人を見る。


「……ダメでした?」


美佳はスプーンを振った。


「いいじゃん」


にこっと笑う。


「飲まなくていい回復」


焚き火が、ぱち、と音を立てた。


その頃――


ギルドでは、報告書が回っていた。


・新型回復手段確認

・分類:摂取型

・形態:固形

・効果:HP回復/疲労軽減/精神安定

・条件:座って摂取すること


備考欄に、赤字で追記。


※戦闘中使用不可

※落ち着いた状況推奨


さらに、その下。


※「パフェは禁止できません」


プリーストは、焚き火の前で呟いた。


「……私、神に祈る係ですよね?」


弓勇者が即答する。


「うん」


美佳も、即答。


「うん」


プリーストは、しばらく考えたあと、

静かに頷いた。


「……でも、癒やしてはいます」


誰も否定しなかった。


「じゃあ」


プリーストは少し考えてから言った。


「……一応、期間限定にしておきます」


「どうして?」


「無制限にすると、

 神殿に怒られそうなので」


誰も、止めなかった。

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