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桃は交通手段ではありません
桃は流れていた。
止まらない。
戻らない。
どんぶらこ、というより、
もう普通に“移動”している。
美佳は川面を見下ろして、
一度だけ、考える。
(……これ、途中下車とかないやつだ)
考えて、すぐやめた。
「交通手段じゃないけど、
使えないわけでもないし」
「とりあえずオーソドックスに、
犬と雉と猿を見つけるか」
そう呟いた直後。
背後で、水音がした。
振り返ると、
桃の縁に、見覚えのない影がひとつ増えている。
尖った耳。
もふっとした尻尾。
「……あれ?」
ケモミミは、
なぜか当然の顔で座っていた。
美佳は一瞬だけ考えて、
すぐやめた。
「団子、食べる?」
返事はなかったが、
尻尾が、わずかに揺れた。
どんぶらこ。




