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落とし物です

美佳はギルドを出た。


外は思ったより静かで、

風があって、

なんとなく歩きやすそうだった。


「……とりあえず、散歩しよ」


目的もなく歩いて、

町の建物がまばらになってきた、そのとき。


「ぬるり」


足元で、半透明の何かが揺れた。


「……あ」


美佳は足を止めて、しゃがみ込む。


ぷるん。 ぷるん。


「これ、スライムだよね」


教科書的なやつ。 弱そうで、遅くて、害が少ない。


しばらく見てから、美佳は首をかしげた。


「……落とし物かな」


誰にともなく言う。


返事はない。 でも、動いている以上、放っておくのも違う気がした。


「うーん」


考えて、一拍。


「とりあえず、届けよ」


理由はそれだけだった。


美佳は周囲を見回した。


石畳の道。

人の気配。

少し先に、建物が固まっている。


スライムを抱えたまま、

そのまま歩き出すことにした。


---


ギルド。


受付嬢が顔を上げる。


「はい、どうされましたか?」


美佳は、両手でスライムを持ち上げた。


「これ、落ちてました」


一瞬。


受付嬢の目が、止まる。


「……落ちて、いた?」


「道に」


「……動いて、いました?」


「はい」


沈黙。


受付嬢は、深呼吸を一つしてから、確認する。


「こちらは……討伐では?」


「してないです」


即答。


「捕まえただけです」


さらに沈黙。


後ろで、紙をめくる音がする。 誰かが、咳払いをする。


受付嬢は、業務用の声に切り替えた。


「……確認します」


奥へ引っ込む。 何人かと、ひそひそ話す。 戻ってくる。


「規定により」


淡々と。


「危険存在を、意図せず無力化した場合も、

貢献として扱われます」


美佳は目を瞬かせた。


「……え?」


「こちらが報酬です」


小さな袋が置かれる。


「いいんですか?」


「……はい」


美佳は袋を持ち上げ、軽く振った。


「へえ」


悪いことをした気は、まったくしない。


「じゃあ、お願いします」


スライムをカウンターに置く。


受付嬢はそれを受け取りながら、

心の中で一つ、メモを残した。


※この人は

「討伐」と「回収」の区別がない


---


ギルドを出ると、

さっきの道は、まだ見えていた。


「あ、近かった」


美佳は袋をポケットに入れる。


「意外と、お金、増えるな」


そのとき。


お腹が、鳴った。

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