表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

言葉のかけらたち

所有者の権限

作者: 山田ぽぽろ





この裏切りものめ。







「こんなつもりじゃなかったの」






何に対しての謝罪なのかよく分からないまま、わたしは座り込んでいた。


心が痛くて、涙が熱くて、喉が痛くて。


けれど、それ以上に世界は冷たく硬い。


唇に乗せて、浮いた悲鳴が、跡形も無くぼたぼたと腐り堕ちる音が聞こえた。


触れた瞼は、まだ柔らかい。






「ねぇ、違うんでしょ。嘘なんでしょ。全部、全部、ぜんぶ」






何が。決まっている。全てだ。


愛しているが、哀しているに変わり、すぐに穢しているに変わったなんて、とうの昔に気づいていたのに、気づかないふりをしていたことが、そんなにも罪だったと言うのだろうか。


甘い夢。辛い指。暖かい肌。冷たい眼。


縋りついた体の厚みは、まだわたしに時の流れを知らせたけれど、喪ったものよりも得たものの法が多かったと、ずっと信じていたのに。










この裏切りものめ。








「すき、って言ったじゃないの。わたしに、何度も言ったじゃない」






だからわたしは、あなたを愛していたのに。わたしの所有物になってくれると思ったから、なってくれると言ったから。


わたしはあなたを心の底から愛していたのに。


あなたが欲した体だって、わたしはちゃんと捧げたのに。


何がそんなに不満だったというの? 


答えなさいよ、この屑が。








「ちょっと、腕をもいだだけなのに」








だって、他の女の匂いがしたんだもの。


わたしの所有物なのに、わたし以外の所有印をつけているから。






だから、ちょっとだけ、もいだだけなのに。






他の女を抱けないように、ちょっとだけ。






なのに、そんなに怒ることないじゃない。


















殺そうとすること、ないじゃない。






















「好きなのに」














好きなのに














「愛しているのに」












哀しているのに














「どうして、勝手に死んだりするのよ」


















ちょっと、後頭部(あたま)を殴ったくらいで。




















「目を開けて」














勝手に死ぬなんて、許さない。


わたしの所有物なのに。














































自由になれた、なんて。


































嬉しそうに死ぬなんて、許さない。














だって、わたしは、あなたを、














































所有(あい)してるんだから。
























「許さない」____何を?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ