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悪魔の子 くう

作者: 雨世界

 悪魔の子 くう


 食べちゃうよ。ごちそうさま。


 その子供は真っ白な体をしていた。顔も髪の毛も体も全部が真っ白だった。

 その大きな瞳の色は紫色で、宝石のアメジストのようにきらきらと輝いている。

 その顔はとても美しくて、まるでお人形のようだった。

 そんなとても変わった姿をしている子供の見た目の中で、一番目立っていたのは、その頭に生えている二本のぐるぐるとしている巻き角だった。

 それは悪魔の角だった。

 そして実際にその子供は悪魔の子供だった。

 本当は天使のように心がとっても優しい、悪魔の子だった。

 悪魔の子は女の子で、名前をくうと言った。

 くうは生まれてからずっと、ずっとひとりぼっちだった。

 くうは友達が欲しかった。

 でも誰も悪魔の子であるくうとは友達になってくれなかった。(くうのことを怖かってみんな逃げてしまったのだった)

 そんなときくうは一人の人間の男の子と出会った。

 その人間の男の子はとても優しい男の子で、初めはもちろん悪魔の子のくうを見てすごくびっくりしていたのだけど、くうのことを怖がって逃げ出したりしないで、くうの顔を見て、にっこりと笑ってくれた。くうに優しくしてくれて、くうの手を握ってくれて、くうのそばにいてくれた。

 そのことがくうはとても嬉しかったから、ぽろぽろと涙を流して泣いてしまった。

「こんにちは。君はなんだかとっても変わっているね」と優しい声で人間の男の子は言った。

「……、はい。こんにちは。えっと、よく言われます」と顔を真っ赤にしながらくうは言った。

 それからくうと優しい人間の男の子はお互いに笑い合って友達になった。

 初めての友達ができて、くうはとっても、とっても嬉しかった。

「……、あの、私のこと怖くないんですか?」

 ある日、そんな風に恐る恐るくうは人間の男の子に聞いてみたら、「初めはびっくりしたけど、怖くないよ。くうは友達だから」と優しい人間の男の子はそう言ってくれた。(嬉しくって、また泣いちゃうかと思った)

 優しい人間の男の子は本当にとても綺麗で美しい心を持っていた。

 それが人の心を食べる悪魔の子のくうにはよくわかっていた。(もちろん食べようとか、そんなことは思わなかったけど、よく綺麗だなって見惚れていたりはしていた)

 くうと優しい人間の男の子は、それからずっと一緒にいた。

 とっても楽しかったし、とっても、……、幸せだった。

 でも、そんな日々は長くは続かなかった。(神様は優しくなかった)

 優しい人間の男の子は生まれたときから、重い病があって、もともととっても体が弱くて、そして子供のままで、その重い病によって亡くなってしまったのだった。

「くう。僕と友達になってくれてどうもありがとう」

 最後に優しい人間の男の子はにっこりと笑ってくうにそう言ってくれた。

 くうは顔がぐしゃぐじゃになるまで泣いてしまった。

 優しい人間の男の子が亡くなってしまって、悪魔の子のくうはまたひとりぼっちになった。

 くうは優しい人間の男の子がずっと横になっていた白いベットのある大きな病院の屋上から夜の明るい都市の風景を眺めながら、思った。

 こんなにたくさんの人間がいるけど、私の友達の人間の男の子よりも美しい心を持っている人間はどこにもいないなって。

 いつのまにかくうの姿は病院の屋上から煙のように消えていた。

 美しい心を持っている人間を探しにどこかに出かけて行ったのかもしれない。

 もう一度、その美しい心を持っている人間の子供と(きっと子供だと思った)、あの亡くなったしまった優しい人間の男の子と同じように、友達になるために。


 誰かと出会うこと。

 ……、友達になること。


 悪魔の子 くう 終わり

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