部活
入学先の翌日
今日も晴れていい天気だ、そんなことを思いながら教室に入る渚
教室の中の空気は昨日までと少し変わっていた
昨日は初対面ということもあり、どこか緊張感のあった教室もすこし和やかになっていた
そんな中席につき誰と会話するでもなく1人で本を読んでいる少年がいた
隣の席の佐伯くんだった
『佐伯くん。おはよ!』
私が声をかけると佐伯くんは一拍おいて
『おはよ』
と一言だけ返してくれた
『何の本を読んでるの?』
『小説』
『そーなんだ』
小説はわかるんだけどな、、、?
私は席について、鞄を広げた
『渚、おはよ』
私に声をかけてきたのは、幼馴染の楓だ
始業のチャイムが鳴った
担任の先生が入ってきた
『ホームルームはじめるぞー』
先生が話し始めた時
廊下を走る音が聞こえてきた
『ふー、セーフ』
そんなことを言いながら遅刻してるにも限らず堂々とした姿で入ってきたのは健ちゃんだった
『十村遅刻だぞ、早く席につけ』
健ちゃんは先ほどまでの態度とは裏腹に恥ずかしそうに席についた
『健ちゃん怒られてんの』
『う、うるせ』
私がからかうと健ちゃんはさらに顔を赤くしてた
『今日は学級委員長を決めるぞ、男子女子一名ずつな立候補者はいるかー?』
教室は静まり返っていた
そんな中楓が小さなため息をつきながら手を挙げた
『先生、私やります』
『おー、志村やってくれるか、男子は誰かいないか』
再度教室が静まり返る
『誰かいないのかいないんだったら指名するぞ』
先生が再度立候補者をつのる
『はい、じゃあ僕やります』
意外な事に手を挙げたのは、佐伯君だった
『え、、』
私は驚いたのと同時に素っ頓狂な声をだしてしまった
そんな私をみて佐伯くんがこっちをみて、少し笑っていた
目が合った私は少し恥ずかしくなって下をむいた
『そしたら学級委員は志村と佐伯なみんなしっかり協力してやれよー』
そうして朝のホームルームは終わった
私は楓の席に向かった
『楓は偉いね』
『そんなんじゃない、誰かが手を挙げないと終わらないでしょ』
『そーだね』
楓は仕方なさそうにいうが、そこが楓のいい所だ
『でも、佐伯くんは意外だったよね』
『あーそれ、私も思った』
私と楓がそんな会話をしていると
『佐伯、すごいな!』
健ちゃんが少し大きな声で佐伯くんに話しかけていた
『そ、そんなことないよ』
『俺、佐伯はおとなしいタイプだと思ってたから意外だったよ、ちょっと尊敬だわ』
『あ、ありがと』
佐伯くんは照れていた、私はそんな姿をみて少し可愛いと思った
そこから休み時間のたびに健ちゃんは佐伯くんの席にきて話しかける様になった
次の日もその次の日も健ちゃんらしいと思った
健ちゃんは自分がかっこいいとか尊敬できる人にはいつもそうなのだ
佐伯くんも以前より少し心を開いている様に見えた
学校生活も2ヶ月たったらもう2人は親友の様に仲良くなっていた
少し羨ましかった
私は相変わらず、健ちゃんと楓ぐらいしか友達がつくれていなかつた
『佐伯くん、ちょっといい?』
楓が佐伯くんに話かけた
『志村さんどうしたの?』
『今日放課後委員長会議なんだって、忘れないでね
それだけ』
『うん、わかったありがと』
放課後
楓に別れをつげ、私は健ちゃんと部活に向かった
『渚、部活慣れた?』
『ううん、まだまだかなー、健ちゃんは?』
『俺はよゆう、佐伯とも前より仲良くなったしな』
『いいなー、健ちゃんが羨ましい』
何気なく言った一言だったが、健ちゃんは少し寂しそうな顔をしていた、私は不思議に思ったがそのまま部活に向かった
女子、男子は1つの体育館で練習を行なっている
コートが2つあるので隣同士なのだ
部活が始まりしばらくすると佐伯くんがきた
『佐伯遅いぞー』
『すいません、委員会、長引きました』
佐伯くんは小学校からバスケをやっている事もあって一年生ながらもうレギュラーみたいだった
以前健ちゃんが悔しそうに教えてくれた
『じゃあ今からミニゲーム』
主将が言うと試合の準備を始めた
私は未経験だったこともあり、まだまだ試合には出れないので得点係をやっている
男子も同じ時間からミニゲームになる、佐伯くんもでてるみたい
教室での佐伯くんは大人しいタイプなのだが試合中になるとすごく楽しそうにしている
私はそんな姿を自然と目で追ってしまっている
最初は本当に上手いなと思って見ていたのだが今は楽しそうにしている佐伯くんを見るのが何故か嬉しい
『立花さん点はいったよ』
『あ。すいません!』
部活終わり
『疲れたー』
『お疲れ、本当に佐伯はうまいよな、俺と早く試合に出てー』
『十村も上達してるよ、もうちょっとで試合でれるよ』
『航は余裕だな、いつか見返してやるからな』
健ちゃんと佐伯くんが話ながら歩いてたので声をかけた
『2人ともお疲れー』
『おう。お疲れー』
『佐伯くんさっきのプレイすごかったね!』
『僕なんてまだまだだよ』
『まだまだなんて、かっこよかったよ』
佐伯くんは驚いていた
私は不思議に思ったが自分の言ったことを思い返して恥ずかしくなった
『渚、俺は?』
『健ちゃんは試合出てなかったじゃん』
『ちぇ』
健ちゃんは少し拗ねていた