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君のための魔王になりたい―転生ミミックの恋愛譚―  作者: 佐賀ロン
ヒナさんへ贈り物をするために
13/57

ヒナさんの反応

 ■


 リンに話を聞いてもらってから、何かスッキリした気がする。

 別に答えが出たわけじゃない。けど、誰かに自分の気持ちを伝えて聞いてもらうのはいいなって思った。

 ――そして次の日、ボコボコにされてリンに連れてこられたメルランがいた。


「いやあ、すまないねマコトくん。どうやら私は、余計なことを言ってしまったようだ」


 ハッハッハと笑いながら謝罪された。ボコボコにされたことは気にしていないらしい。


『り、リン……? お、俺、そこまで気にしてないっていうか、ぼ、暴力はちょっと……』

「? いつも通り、こいつがギルドの皆から金借りて、カジノ行きそうになったのを止めただけだけど?」


 あ、そりゃ止めますわ。いや、暴力はよくないと思うけどね? 俺が相談したせいで殴られたとかじゃなくてよかった。


「お詫びと言ってはなんだが、ヒナに贈り物をする時、料理も一緒に頼んだらどうだろう? 代金は私が支払おう」

『その金はどこから?』

「ははは。遠慮することはないさ」


 遠慮じゃねえよ。

 俺が思わずリンを見ると、リンははあ、とため息をついていた。

 まあ、色々あったけど。無事ピアスも買えたし。後は渡すだけだ。

 ……ここで俺は、ある最大の悩みにぶち当たった。

 これ、どうやって渡そう?






 


「ヒムロさん、ただいま!」


 約束の一週間から三日後。ヒナさんが仕事から帰ってきた。

 遠方での盗賊退治という、結構大変な仕事をこなして来た後だと言うのに、ヒナさんは元気いっぱいだ。


「ごめんなさい! 約束してくれたのに、間に合わなくて」

『そんなの全然問題ないよ。それより、怪我とかしなかった?』


 見る限り、多分大丈夫なんだろうけど。

 仕事内容が内容だし、無事に仕事が終わっても、途中でなにかの事故にあってるんじゃないかなとか、ちょっと心配していた。

 ……嘘です、かなり心配してました。

 心配しすぎた結果、動き回る代わりにガタガタと身体を揺らしまくった結果、ついに『スキル:跳躍』で歩行手段を得るようになったのはナイショである。リンからは「マコト、うるさい」と苦言を呈された。


「大丈夫! 盗賊自体はそんなに強くなかったから」


 そう言って、力こぶを見せるかのような仕草を見せる。かわいい。


「ちょっと気になることがあって、そっちに時間取られちゃって」


「お腹すいちゃった」照れくさそうに笑いながらヒナさんが飲食スペースへ向かおうとするので、俺は引き止めた。


『あ、ちょっと時間貰っていい? すぐ終わるから』


 俺がそう言うと、ヒナさんは「え、何?」と小首を傾げた。


 ――あれから、渡し方を色々考えたけど。

 俺の姿は宝箱である。つまり、何をどうやってもギャグにしかならない。

 ならばいっそのこと、ギャグに突っ走ろうと考えた。その結果。


 自分が贈り物の箱になればいいんじゃね? と思った。


 パカ、と、俺は蓋を開ける。

 さすがにピアスを丸出しで渡すのは無くしそうで怖かったので、ちゃんとリボンをつけた箱に入っている。箱に箱ってマトリョシカか。


『えーと。……感謝の気持ち、デス』


 俺がそう言うと、ヒナさんは目を開いたまま固まった。


 ……やばい、失敗した!?

 思わず俺も固まってしまう。そこに、メルランがヒナさんの後ろから声を掛けてきた。


「プレゼントだってさ、ヒナ」


 そう言われ、ハッとヒナさんが顔を上げた。


「え、私に? プレゼント?」

『う、うん。気に入ってもらったらいいん、だケド……』

「とっていい!?」

『う、うん』


 思った以上に大きな声が帰ってきたので、ビックリしつつ返すと、ヒナさんは躊躇いもなく俺の箱の中に手を入れた。

 ……いや。こんなことした俺が言うのもアレだけど、よくヒナさん手を突っ込めるな。ミミックの口だよ? そこ。

 ――ってか口に手を突っ込まさせるって、これセクハラになる? 宝箱だからセーフ?

 ドキドキしながらまた別のことを考えていると、ヒナさんは両手で箱を持って眺めていた。


「はわ……はわわ……」


 青いリボンで飾られた、白い小さな箱を眺めながら、口をアワアワさせるヒナさん。


「……開けたら?」


 リンの言葉に、「そ、そうだね!」とヒナさんは青いリボンを解き、蓋を開けた。


「わ、わー! ピアスだ!! かわいい! すごい!」

『気に入ってもらえた?』

「うん! 好き! 嬉しい!! ありがとう!」

「せっかくだし、ここでつけてみなよ」


 メルランが促すと、ヒナさんは元気よく頷いてピアスを取り出し始める。

 ……いや、二人のアシスタントありがたい。俺一人だったら『えっと、あの』で終わりそうだった。ありがとう二人とも!


 ところが、箱から取り出そうとして、ヒナさんはまたもや固まった。

 そして涙目になりながら、こう言う。



「こ、壊しちゃわない? こんな小さいの、私の握力で……」

『心配そこ!?』

「君、毎日ピアス付けてるでしょうが」

「だ、だって……今、壊れたら私、絶対立ち直れないよ……?」



 小刻みに震え出すヒナさんに、メルランが「仕方ないなあ」と言い、なにかの魔法を掛けた。


「ほら、『固定魔法』掛けてあげたから。これでもう、いくらヒナの握力が狂戦士(バーサーカー)並でも壊れないよ」

「メルラン……ありがとう!」

『いや、その発言は怒っていいんじゃないかな!?』


 俺は思わず突っ込んだが、ヒナさんは気にせずピアスをつけ始めた。

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