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10番目の婚約者である氷の伯爵様だけが婚約破棄をしてくれない!〜子供が可愛すぎて伯爵様の溺愛に気づきません〜  作者: 屋月 トム伽
第三章

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冷たい伯爵

崩れていく部屋から転落しそうになる瞬間、リクハルド様が私を掴んだ。彼に支えられて下を見れば、瓦礫が音を立てて落ちていく。


そして、リクハルド様の腕の中にいることにハッとした。


「離せ! 変態!」

「暴れるな! 危ないだろ!!」


リクハルド様の腕から抜け出そうとしてジタバタとするが、彼が離すことはない。瓦礫も少しずつ崩れていた。


「落ちるぞ。キーラ」

「落ちても大丈夫です! 自分に強化魔法をかけてますから!!」


ここまでよじ登るために、強化魔法を自分にかけた。おかげでモーニングスターも振り回せたのだ。


「どこが大丈夫だ!」


私の行動にリクハルド様が驚愕している。困っているのかもしれない。


「心配させるな」


そう言って、リクハルド様が私を抱き寄せた。


「リ、リクハルド様ーー! た、助けてっ!!」


リクハルド様に抱き寄せられていると、ルミエル様が今にも転落しそうな状態で助けを求めている。


「まだいたか! 今すぐにとどめを刺してやるぅ!!」


しぶとい。ルミエル様に腹立たしい気持ちは続行中で、ギリギリと歯ぎしりしてしまう。ここから落としてやろうとすれば、リクハルド様が私の腕に手を置いて止めた。


「キーラ。少し待て」

「やっぱり! 脅されてでもルミエル様を助けるなんて……!」

「違う! 少し黙っててくれ」

「何を!?」

「すべてだ!」

「ぎったんばったんを見ていろと!?」

「ベッドは、木っ端微塵になってもうないだろう!! いいから黙ってろ!」


リクハルド様に怒られてしまった。


「ルミエル。さっきの続きだ」

「何の続きだ! このやろうぉ!」


ぎゅうっとリクハルド様の首を締めた。


「キーラ」

「何よ! 変態!」

「話が進まないんだよ」

「はうっ!」


眉根を吊り上げたリクハルド様が言うと、左胸がキュウッと締め付けられた。「よし」と言ったリクハルド様が胸を押さえる私を抱き寄せたままで、ルミエル様の方を向いた。


「ルミエル」

「ちゃ、ちゃんと言いますわ! だからっ」


瓦礫にぶら下がり、今にも落下しそうなルミエル様が必死の形相で言う。


「では、もう一度聞く。セアラとエヴァンスを殺したのか?」

「…っ。あ、あれは、」


(え……)


リクハルド様の発言と、ルミエル様の反応に驚いた。茫然として頭に登った血が冷えていく。


「まさか……セアラ様を殺したのですか?」

「……っ!!」


ルミエル様の表情は、その通りだった。


「……っわ、私たちは、馬車に細工しただけですわ!」

「セアラは事故でなく、殺したのだな」

「三人が事故にあえば、浮気の言い逃れができないからっ……」


ガラッと音を立てて、ルミエル様のそばの瓦礫が落ちていくと、ルミエル様が恐怖した。


「いや! 死にたくない! リクハルド様っ! 早く助けて! 出産証明書もジェレミーが隠していると話しましたわ! セアラの事故もっ、ジェレミーがっ……ちゃんと話したのですからっ」


すると、リクハルド様が今まで見たことないほどの冷たい表情でいた。一歩も動く気配さえない。


「誰がお前を助けると言った」

「そんな!! 浮気をしたのはセアラですわ! 悪いのもセアラでっ……い、いや、セアラみたいに死にたくない……っ!!」

「そのセアラが死んでいく様をシリルに見せた。あの子は、ずっとその場で見ていたのだ」


いくら赤ん坊だったとはいえ、シリル様がどんな思いで見ていたのかと思えば、涙が出た。

リクハルド様が怒りを込めて冷ややかに言うと、ルミエル様が青ざめた。邸が次々と崩れていく。そして、ルミエル様がぶら下がっているところが崩れた。


「いやっ、イヤァーーーー!!」


ルミエルが悲鳴をあげながら落下した。






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