表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10番目の婚約者である氷の伯爵様だけが婚約破棄をしてくれない!〜子供が可愛すぎて伯爵様の溺愛に気づきません〜  作者: 屋月 トム伽
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/82

冷たい伯爵


――誰でも良いなら、とっくに婚約をしている。


キーラに言った通り、実際にそうしようと思っていた。でも、する気になれないでいた。


最初は、顔だけ選んだ。でも、一緒に過ごすうちに気持ちが芽生えてきていた。

子供が好きだとは知らなかったが、何よりもシリルを大事にして、気遣ってくれることが嬉しかった。


部屋も開けてくれないキーラ。仕方なく今のうちにシンクレア子爵のところへ行こうとすれば、ルミエルがこちらにやって来ていた。


「リクハルド様。今、お会いに行こうと……」

「シリルなら、寝ている。一晩中彷徨っていたらしく疲れたのだろう」

「まぁ、可哀想なシリル様」


本当にそう思っているのか。そんな気持ちでルミエルを見た。


「リクハルド様は、お休みになられないのですか?」

「キーラに追い出された」

「キーラ様に? でしたら、私の部屋で休みますか?」

「シンクレア子爵はどうした?」

「寝込んでますわ。夜までお起きになられないかと……」


シンクレア子爵は、セアラが他界してから寝込むことはしょっちゅうだった。シリルが行方不明になっても、倒れてしまう。


思わず、ため息が出た。


「リクハルド様。キーラ様は帰さないのですか? 彼女がいれば、シンクレア子爵が落ち着かなくて……セアラ以外の女性がいると、シンクレア子爵が焦ってしまうんです。シリル様を取られると思っているようですし……」

「……キーラは、俺の婚約者だ。覆ることはない」

「でも……私ではダメなのですか? 私はずっとリクハルド様をお慕いしていて……キーラ様のようにリクハルド様に手を上げることだってしませんのに……ずっとリクハルド様のお相手をしてきたのも、私ですわ……」


我慢の限界かのように、ルミエルがスカートをぎゅっと握りしめて言う。そんな彼女を冷たい目で見下ろした。


すると、ルミエルが縋るように抱きついてきた。


「お部屋に来てください。ずっと待っていました。以前のように抱いてくだされば……」


胸を押し付けて、ルミエルが誘う。


「ルミエル。キーラと契約魔法を交わした」


そう言って、シャツを緩めてキーラと交わした魔法の契約の紋を見せた。キーラと同じように胸元にある。


「ウソ……」

「キーラと結婚するために、俺から交わしてもらった」


ルミエルが涙目で、歯を食いしばった。そして、魔法の紋へと手を伸ばしてきて、触れられて嫌悪したようにびくりとした。縋るように抱きついていたルミエルが胸元で泣き始める。


「私のほうが先でしたわ。セアラが死んで、リクハルド様を慰めたのは私ですわ。だから、ずっと待っていたのに……」

「俺は、恋人にはならないと言ったはずだぞ」


気が向いた時しか来ない。ルミエルに、初めて誘われた時にそう言えば、それでもいいとルミエルが言っていた。そして、曖昧な関係でいた。気持ちもないままに。


「いや……」


縋り付いて泣くルミエルを抱き寄せて、耳元で囁いた。


「ルミエル。シリルの出産証明書はどこだ?」


その言葉にルミエルがわずかにビクッとした。


「知りません」

「本当にか?」

「だから、リクハルド様たちに協力してずっと探していますわ! それなのに、私のところにずっと来てくださらないで……」


素っ気なく、静かに、興奮気味のルミエルを引き離した。


「リクハルド様……」

「……面倒な女は嫌いなんだ。知っていたかと思っていたが、俺の勘違いだったようだ」

「……どこに行くのですか?」

「キーラのところで寝る。シンクレア子爵も寝ているようだしな」


ルミエルに背を向けて歩きだしていた。そして、一度だけ振り向く。


「君は二度と抱かない。わかっていると思っていたが、言わないとわからなかったみたいだな。だいたい、俺が一度でも優しい男に見えたか?」


そして、泣くルミエルを置いて部屋へと戻った。


「いや……行かないで、リクハルド様」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ルミエラを見ているとシリルの出産証明書を隠し持っていそうだし、シリル両親を殺したのも彼女なんではと思っちゃいますね。それも全部リクハルドと自分が結婚するために。か弱そうに見せて、実は腹黒で相当したたか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ