飛び出して、間違えて!
シリル様が行方不明になっており、思わず叫んでしまう。
シリル様が行方不明で、リクハルド様も驚いているけど、私の叫び声に彼が更に驚いた。
「すぐに探しに行かなければ!!」
「ちょっと待て!!」
慌てて飛び出そうとした私をリクハルド様が止める。
「何をするんですか! リクハルド様!」
「居場所がわからないだろ!」
「だから、早く探しに行かないと!」
「すぐに探すが、キーラは待ちなさい!」
リクハルド様に羽交い締めにされて暴れていた。
「シリルの居場所はわかる。すぐに追いかけるから、キーラは……」
「すぐにわかる? 私も行きます!!」
リクハルド様を魔法で弾こうとするのをやめて力を抜くと、彼が私から手を離した。
「落ち着いたほうがいいのではないか?」
「シリル様の大ピンチですよ! もし森にでも行っていれば、魔物が……っ」
「弱い魔物は大丈夫だか……」
そう言いながら、リクハルド様が懐から懐中時計を出した。
「弱い魔物は大丈夫?」
首を傾げてリクハルド様に聞く。
「お守りを持っているはずだ。あれでおおまかな居場所がわかる。ケヴィン。シリルは、剣を持っていなくなったのだろう?」
「は、はい! 狼のリュックと一緒に見当たりません。朝から、邸の使用人すべてで捜索をしておりますが……」
ケヴィンが恐縮して返事をする。確かに、剣にウィルオール殿下からお守りをいただいてぶら下げていた。リクハルド様は、懐中時計をじっと見ている。
「東の方角か……王都の方角だな……街道を外れた森か?」
「ま、まさか、帰ろうとして道に迷ったのでは!?」
「あり得るな。……まさか、キーラの真似して、まっすぐ向かったのでは……」
思わず、ヒィッと青ざめる。
「とにかく、邸のそばの森へ行こう。俺たちは、街道を通って来たが、シリルには会わなかった。お前たちは、邸の使用人たちと森以外の場所を引き続き探せ」
「シ、シリル様ーー!!」
「キーラ! 一人で行くな!」
冷静なリクハルド様と違い、私は慌てて邸のそばにある森へと駆け出した。
シリル様を探しに入った森では、人の気配などない。そんな森で、足元がきらりと光った。見れば、ガラスの破片が散乱しており、ランタンが壊れて落ちており、嫌な予感がして青ざめた。
「キャーー!」
「キーラ!? どうした!?」
「ランタンがっ……!」
「ランタン?……」
冷静なリクハルド様と違って、壊れたランタンに恐怖した。すると、「キェー!!」と鳥の魔物の鳴き声が響き渡った。
「シ、シリル様ーー!」
「シリル!」
可愛いシリル様なら、魔物も狙うはず!
鳴き声の聞こえた方角へと飛び出せば、シリル様に怪鳥が襲いかかろうとしていた。
「キャーー! 雷霆の剣」
慌てて空から、魔法で怪鳥を狙う。が、怪鳥の下には座り込んでいるシリル様がいて青ざめた。
「キャーー! 間違えましたわ! シリル様ーー!」
魔法の弓で貫くはずが、魔法を間違えて上空から現れる魔法を使ってしまった。このままだと、シリル様まで魔法の剣に刺されてしまう。
雷音とともに、怪鳥へと狙いを定めた魔法の剣が天から落ちてくる瞬間、シリル様に走り寄った私は、両手でシリル様を抱きしめた。
「シリル様ーー!!」
「シリル! キーラ!」
リクハルド様が手を伸ばして駆け寄る。
「氷の盾」
そうして、雷の剣が大地に突き刺さる音と氷が割れる音がした。




