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10番目の婚約者である氷の伯爵様だけが婚約破棄をしてくれない!〜子供が可愛すぎて伯爵様の溺愛に気づきません〜  作者: 屋月 トム伽
第二章

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飛び出して、間違えて!


シリル様が行方不明になっており、思わず叫んでしまう。

シリル様が行方不明で、リクハルド様も驚いているけど、私の叫び声に彼が更に驚いた。


「すぐに探しに行かなければ!!」

「ちょっと待て!!」


慌てて飛び出そうとした私をリクハルド様が止める。


「何をするんですか! リクハルド様!」

「居場所がわからないだろ!」

「だから、早く探しに行かないと!」

「すぐに探すが、キーラは待ちなさい!」


リクハルド様に羽交い締めにされて暴れていた。


「シリルの居場所はわかる。すぐに追いかけるから、キーラは……」

「すぐにわかる? 私も行きます!!」


リクハルド様を魔法で弾こうとするのをやめて力を抜くと、彼が私から手を離した。


「落ち着いたほうがいいのではないか?」

「シリル様の大ピンチですよ! もし森にでも行っていれば、魔物が……っ」

「弱い魔物は大丈夫だか……」


そう言いながら、リクハルド様が懐から懐中時計を出した。


「弱い魔物は大丈夫?」


首を傾げてリクハルド様に聞く。


「お守りを持っているはずだ。あれでおおまかな居場所がわかる。ケヴィン。シリルは、剣を持っていなくなったのだろう?」

「は、はい! 狼のリュックと一緒に見当たりません。朝から、邸の使用人すべてで捜索をしておりますが……」


ケヴィンが恐縮して返事をする。確かに、剣にウィルオール殿下からお守りをいただいてぶら下げていた。リクハルド様は、懐中時計をじっと見ている。


「東の方角か……王都の方角だな……街道を外れた森か?」

「ま、まさか、帰ろうとして道に迷ったのでは!?」

「あり得るな。……まさか、キーラの真似して、まっすぐ向かったのでは……」


思わず、ヒィッと青ざめる。


「とにかく、邸のそばの森へ行こう。俺たちは、街道を通って来たが、シリルには会わなかった。お前たちは、邸の使用人たちと森以外の場所を引き続き探せ」

「シ、シリル様ーー!!」

「キーラ! 一人で行くな!」


冷静なリクハルド様と違い、私は慌てて邸のそばにある森へと駆け出した。


シリル様を探しに入った森では、人の気配などない。そんな森で、足元がきらりと光った。見れば、ガラスの破片が散乱しており、ランタンが壊れて落ちており、嫌な予感がして青ざめた。


「キャーー!」

「キーラ!? どうした!?」

「ランタンがっ……!」

「ランタン?……」


冷静なリクハルド様と違って、壊れたランタンに恐怖した。すると、「キェー!!」と鳥の魔物の鳴き声が響き渡った。


「シ、シリル様ーー!」

「シリル!」


可愛いシリル様なら、魔物も狙うはず!

鳴き声の聞こえた方角へと飛び出せば、シリル様に怪鳥が襲いかかろうとしていた。


「キャーー! 雷霆の剣(ブリスクトソード)


慌てて空から、魔法で怪鳥を狙う。が、怪鳥の下には座り込んでいるシリル様がいて青ざめた。


「キャーー! 間違えましたわ! シリル様ーー!」


魔法の弓で貫くはずが、魔法を間違えて上空から現れる魔法を使ってしまった。このままだと、シリル様まで魔法の剣に刺されてしまう。

雷音とともに、怪鳥へと狙いを定めた魔法の剣が天から落ちてくる瞬間、シリル様に走り寄った私は、両手でシリル様を抱きしめた。


「シリル様ーー!!」

「シリル! キーラ!」


リクハルド様が手を伸ばして駆け寄る。


氷の盾(アイスベルグ)


そうして、雷の剣が大地に突き刺さる音と氷が割れる音がした。




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