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10番目の婚約者である氷の伯爵様だけが婚約破棄をしてくれない!〜子供が可愛すぎて伯爵様の溺愛に気づきません〜  作者: 屋月 トム伽
第二章

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感情の上昇下降


やっとできましたわ!


街に買い物に行ったときに、シリル様に似合いそうな狼のぬいぐるみのリュックを見つけた。迷わずに買って、背中の部分にシリル様が剣を収められるように縫っていた。


お裁縫は苦手だけど、やればできるものだと自分に感心した。休まずに頑張ってお裁縫をしたかいがあった。


シリル様に渡そうとして子供部屋へと向かうと、リクハルド様とシリル様が玄関で一緒にいた。思わず、狼のぬいぐるみのリュックを背中に隠した。


「どこかへお出かけですか?」

「ああ、少し出かけようと……」

「そうでしたか……」


また、ウィルオール殿下のところにでも行くのかと思えば、シリル様が足元に駆け寄ってきた。


「キーラ様……!」


シリル様が満面の笑みでないにしても、嬉しそうに私を見上げた。


「待っててください」

「はい」


何を? と思いながら、シリル様の目線に合わせて腰を下ろした。


「シリル様。両手を出してください」

「こうですか?」


首を傾げるシリル様の前に背後に隠していた狼のリュックを出した。


「おおかみ……?」

「シリル様にプレゼントです」

「プレゼント? 僕に……?」


シリル様がポカンと口を開けて驚いたかと思えば、目を輝かせて受け取った。


「街でとってもシリル様に似合いそうな狼を見つけたので、買ってきました。背中には、剣が収められるように、少し縫ってみました」

「すごい……キーラ様が……」

「あまり上手ではありませんが、背中の部分は見えないので、許してくださいね」


さっそくシリル様が嬉しそうに背中にリュックを背負うと、似合いすぎて思わず拳に力が入る。背中とリュックの間にはちょうど良く剣が刺さっている。


「まさか、これをずっと縫っていたのか?」

「そうですよ。リュックには剣を収めるところがなかったので……」


感心したようにリクハルド様が言った。


「あ、ありがとうございます! キーラ様」

「どういたしましてです。狼はとっても強いので、シリル様にお似合いですよ」


ふふっと笑みが零れると、シリル様が両手を伸ばして私の頬にそっとキスをしてきた。


「行ってきます。キーラ様」


可愛すぎて、思わず腰が抜けてその場で両手をついた。


「……可愛すぎて鼻血でそう!」


くっと拳に力が入る。リクハルド様は、無表情で私を見ると、そっと私の身体を起こしてきた。


「……大丈夫か?」

「シリル様が可愛すぎておかしくなりそうですわ」

「ただの出かける時の挨拶だろ……少し落ちつけ」


落ち着くのはちょっと無理ですわ。

呆れるリクハルド様をよそ目に口元を押さえていると、ルミエル様がやって来た。


「お待たせしました。リクハルド様」

「ああ、来たか……遅かったな」

「すみません。まだ足が痛くて……」


まるでルミエル様と一緒に出掛けるような雰囲気だった。リクハルド様とシリル様とルミエル様の三人で。


鼻血が出そうだった鼻が一瞬で冷めるような気分になる。


「キーラ様。先ほどは私にケーキを譲ってくださったようで……すみません。いつものようにリクハルド様の料理人が作ったものだと思っていたので……今度は美味しいケーキをお持ちしますね」

「お気になさらず」


また来るつもりらしい。何をしに来るのだろうか。わけがわからないままで笑顔で応えた。

リクハルド様は相変わらずの無表情で感情が読めないけど、私とルミエル様の空気をみている。


「では、少し出かけてくる」

「はい。お気を付けて」


にこりとして言うと、リクハルド様が私の肩を抱き寄せて、頬に口付けをした。


「あの……リクハルド様。いいのですか?」

「何がだ? 婚約者への出かける時の挨拶だろ」


リクハルド様が、ルイーズ様がいた時と同じようなことを言い出した。

ルミエル様もいるのに、なんだがいたたまれなくて、ムッとして紅潮した頬を押さえてリクハルド様を見た。

何がだ、と言われても、同意できない気がする。挨拶と言っても毎日されるわけではない。思いだしたように頬に口付けの挨拶をされる。


「では、行ってきます。キーラ様」

「はい! お気を付けて。シリル様。リュックもお似合いですよ!」


冷たい雰囲気のリクハルド様を通り越してシリル様に寄った。さっそくリュックを背負い、剣もばっちりと収めている。


そうして、馬車に乗り込んだ三人を見送った。


三人で出かけるなら遅くなるのだろうか。

シリル様が可愛すぎて感情が上昇する気持ちと、冷たい顔のリクハルド様とのことで感情の上がり下がりが激しい。


「……私も出かけようかしら?」


思わず、ぽつりと呟いた。すると、背後からケヴィンが話しかけてきた。


「奥様もお出かけですか?」

「あら、ケヴィン、いましたか」

「ずっといました」

「そう……では、私も出かけますから、今夜の晩餐は遠慮しますね。使用人たちもゆっくりと休んでください」

「お気遣いありがとうございます。差し入れもありがとうございました」

「喜んでもらえてよかったわ。では、さっそく着替えてきますので、もう一台馬車の準備をしておいてくださいね」

「かしこまりました」






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