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 茂みに入って上下の服を脱ぐと悪魔に服を放り投げろと言われたので、下着だけの姿の時間は可能ならば短くしたいと願いながら服を投げた。



「手早く頼む」


「さて、上手くやるかね」



 本が輝くと放り投げた服が大量の水の塊に包まれた。

 水の塊の中で水流が流れているようで、服が上下左右に動く。洗っているようだが、乱れ動いているので服の汚れが取れているのか分からない。

 しばらく待っていると洗い終わった。服が入っていた水の塊が壊れると水がその場に落ちたが、服は空中に留まっていた。



「ずぶ濡れの服を着せるつもりか」


「そんなことをしたら俺がご主人に怒られる」



 空中に留まっていた服がまた動き出したかと思うと、服に向かって熱風が吹き始めた。



「風で乾燥させるのか……。便利な魔法だな。私にも使えるか」


「無理だろ。ただの風魔法じゃない。同時に火魔法を組み合わせているから、人間が使うには相当な魔法の才能がいる。あんたにはそこまでの才能はないだろ」


「はっきり言ってくれる」



 グリオットの魔法の才能は生前の俺よりもあるとは思うが、天才と呼ばれる部類の才能ではないのだろう。俺としても魔法は使えることには越したことはないが、剣を降っている方が好きなのでかまわない。



「威力次第では熱風で敵を焼き焦がすことも出来る」


「服を焦がすなよ」


「焦がさないように慎重にやってるよ。その分、時間は少しかかる」


「しばらくはこの情けない姿のままというわけか」



 下着姿のまま森の茂みの中に立っている姿は誰にも見られたくはないので落ち着かない。



「待ち時間に確認したいことがある」



 俺が少しでも早く時間が過ぎることを願っていると悪魔が話しかけてきた。



「なんだ?」


「お前は何者だ?」


「何者? グリオット・フォレノワール。公爵家嫡男だぞ。今更何を」


「名前や爵位を聞いてるわけじゃない。お前はただの人間なのかという確認だ」


「ただの人間でしかないぞ」



 悪魔が何を確認したいのかよく分からない。



「俺達、悪魔には人間の魂が見える。形や色、大きさがな。人間、いや、他の生物も含めて全てに魂がある。魂は肉体とともに成長し、育っていくもので肉体と魂は同じ形になるのが普通だ。しかし、お前の魂は肉体との形が違う。それはどういうことだ?」



 予想外のところから今の俺がグリオット以外の人物ではないのかという疑惑を向けられて心音が高鳴った。


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