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笑顔


「誰だ、貴様は」


「教えてやりたいところだが、名前を教えられる相手は限られていてな。教えられん」



 もうラクレームのフリをする必要がないためか、ソイツは大げさな手振りと口調になる。



「ラクレームはどこだ?」


「婚約者のことが心配か」


「当然だろう」


「無事だと答えておこう。無駄に命を奪うことはせん」


「こいつは無駄じゃなかったってことか」



 視線を動かなくなった盗賊の頭目へ向ける。



「盗賊達は役立ったからな。役に立った者達を無駄とは言わないだろう」


「言葉遊びをするのか。悪魔も」


「さすがに気付くか」


「見せびらかすように儀式の本を持っているんだ。普通に気付く」



 実質は消去法だ。考えられない選択肢を無くしていった結果として、何が原因か分からないが儀式の本から悪魔が呼び出された可能性が高いとなった。



「誰がお前を呼び出した」


「それも俺が言わなくても気付いているんだろう。該当者は一人しかない」



 悪魔を呼び出した人物が俺のまったく知らない人間でない限り、悪魔の言う通り該当者は一人しかいない。

 ラクレームだ。

 なぜ彼女が悪魔を呼び出したのか。そもそも儀式の本は鍵付きの上、魔法で封印していた。偶然、手に出来るものではない。

 ラクレームといえども、人の家の中にある鍵付きの品を勝手に取ったりはしないだろう。



「ラクレームしかいないだろう。だが、彼女が出来るはずがない。彼女は人の所有物を勝手に持ち出すような子ではない。行動は破天荒で思いつきから暴走することはあっても他人を尊重出来る子だ。仮に儀式の本を発見して興味が持ったのだとしても、俺に確認をしてくるはずだ」


「ほう、随分と理解しているようだな」


「一緒に過ごしていれば嫌でも分かる。何よりも今回、俺のためにと準備してくれた彼女を信じる」


「ふふふ、俺はお前の婚約者がどのような人間かを詳しくは知らないが、一つ言えることはだ。自室に突然現れた不可思議な本を念入りに調べるくらいには好奇心が旺盛だということだ」


「っ!? ラクレームを利用したのか!」



 悪魔が笑顔を浮かべて口角を上げていく。



「あの程度の封印処置で閉じ込めておけると思っているのが悪い。ただの本だと油断したか。多少移動するくらいは出来るのだよ」


「不気味な本だとは思っていたさ。だからこそ魔法での封印もした」


「魔法は俺達悪魔の大得意な分野だ。金属のでっかい箱に閉じ込めておいた方が出るのに苦労するんだぜ」


「次からはそうさせてもらおう」



 剣を構えて、ラクレームの姿をした悪魔との距離を測る。



「斬りかかってくるのか。大事な婚約者さんの姿なのに? 多少は迷ってもいいだろう」


「姿? 迷わせるつもりがあるなら、ラクレームなら絶対にしないその悪魔じみた笑顔を辞めるんだな」



 悪魔は笑顔を辞めるどころか、大きく口を開き歯を見せて笑い始めた。


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