ラクレーム達はどこへ
状況、動きます。
体を揺すられて目を覚ました。
いつの間に寝ていたのか。寝てしまった瞬間は覚えていないが、食後にまったりしていて、暖かな陽気の中で気持ちが良くて寝てしまったのだろう。
開けた目にはまだ高い日差しの差してきているので、寝ていたのは短時間のようだ。
「お目覚めになりましたか?」
体を揺すり、起こしてきたのはクローセさんだった。
「どのくらい寝ていた?」
「ほんの少しですよ。一時間くらいしか経っていません」
「短時間にしては熟睡した感じがするな」
「気持ちよさそうに寝ていましたよ」
気が抜けた顔を見られたことにやや羞恥心を感じながら、周囲を見るとラクレームとレジェスの姿がなかった。
「ラクレーム達はどこに?」
「グリオット様が眠られてからしばらくは寝顔を眺めていましたが、このまま眺めているといたずらをしたくなってしまうからと散歩に出かけました」
「散歩か。確かに自然は多いから散歩には良さそうだ……で、俺を起こした理由はなんだ?」
理由を聞くとクローセさんの顔が強張る。怒っていると勘違いさせたのかと思い、訂正する。
「怒ってるわけじゃない。クローセさんが理由も無く、私を起こすはずはないと思っているからなんだ」
「実は散歩に出かけられているラクレーム様達のことで……」
「気になることがあるのか」
「お二人が出かけられる際、この砂時計の砂が二回落ちきるまでには戻ると言われていたのですが、もう五回落ちているのに戻ってこないのです。それで心配になりまして」
クローセさんは手にしている砂時計を眺めている。砂時計の砂が一回落ちきる時間は分からないが、倍以上の時間が経って戻ってこないのは不安だろう。
想定外の事態に遭遇しているのか、気まぐれで時間を忘れてどこかで遊んでいるのか。
後者であればと願う。
「レジェスが付いているから、滅多なことはないはずだが……。心配ではあるな。探しに行くとしよう」
「私もお供します」
「いや、クローセさんはここで待っていてくれ。入れ違いになると困る。一旦周辺を軽く探し回って戻って来るさ。それで見つからなければ、馬車で待機させている御者達にも応援を頼んで探すとしよう」
「……分かりました。お気をつけて」
クローセさんの声を背にコテージから離れると俺は道に従って山の麓の森へと足を向けた。想定外の事態が起こっているとすれば、こちらの方角だろう。湖の方で何かが起こったのであれば、周辺は開けているので逃げてくるのは容易で、声の一つも聞こえてくる。だが、森の中となると視界は遮られる上に、木々が多いので声も通りにくい。
時間を忘れて花摘みでもしていることを願いながらも、腰に差している剣を握りしめた。