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楽しむこと


「お待たせしました。グリオット様、ラクレーム様」


「もっと待たせても良かったですわよ。レジェス」


「申し訳ありません。ですが、せっかく作った料理が冷めてしまってはグリオット様のご気分が損なわれるかもと思いましたので」


「それはもっともですわ。ささ、グリオット様、いただきましょう」



 ラクレームは食事をするために俺の膝から頭を起こした。

 並んで座る俺達の前の差し出された料理はウィンナーや野菜が入ったスープと厚切りのトマトソースとチーズがかけられたパンだ。パンからは香ばしい匂いがしていた。流石に焼き立てではないだろうから、直前で表面を炙ったのだろう。



「美味しそうだな」



 素直に思った感想を口にすると実際に料理を作った二人の他、ラクレームも満足そうに笑顔を浮かべた。



「見た目だけではありませんよ。どうぞ、グリオット様、ラクレーム様、お召し上がりください」



 レジェスに勧められるまでもなく、俺は料理に手を伸ばして食べ始める。

 食事をするのは室内がほとんどだったので、このような周囲が開けた場所で食事をするのは新鮮だった。場所の雰囲気もあり、料理の味が数段増している気がした。


 軽い雑談を交えながら、あっという間に食べ終えてしまう。

 美味しかっただけにやや物足りなさを感じてしまった。



「いかがでしたでしょうか?」



 食後のコーヒーを入れながら、クローセさんが聞いてくる。



「最初の感想通り、美味しかった。料理のメインで作ったのはレジェスか」


「はい、私はお手伝いだけです。レジェスさんの手際がお見事でした」


「恐縮です。クローセさんこそ、よく気が効いて、私が用意してほしい物を事前に準備してくれたりと助かりました」



 二人が褒め合うのを見て、屋敷で一緒に過ごす期間の中で仲良くなったようだと感じた。クローセさんには俺が把握出来る範囲で友好を深めてほしいと考えている。俺が知る、前世では死んでいる彼女の影響は常に頭の隅で考えておかなくてはいけない。

 そういう意味で屋敷の他の使用人達、レジェスと仲が良いのは言い方は悪いが都合がいい。



「グリオット様、難しいことを考えている顔をしていますわ」


「そうか?」


「そうです。こんなに景色が良い場所で、美味しい料理を食べた直後なのですから、リラックスして笑顔にならないと駄目ですわ」



 ラクレームに窘められたので、両頬をほぐすように触りながら笑顔を作る。



「これでいいか?」


「ええ、満足ですわ」



 考えることが多いのは確かだが、今日はせっかくラクレームが用意してくれた場だ。余計なことは考えないようにして楽しむとしよう。

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