陽気
読んでくださる方々、あけましておめでとうございます。
本年も可能な限り日数を開けず、少ない文字数ではありますが、更新していきたいと思います。
緩やかな風が吹き、花々が揺れる音と鳥達の鳴き声だけが聞こえる空間でゆったりとした時間に過ぎる。
「グリオット様?」
「何だ?」
「このような静かな時間はお好きですか?」
「そうだな……」
素直に考えると若い頃はこのような何もしない時間というのは、時間が勿体ない気がして落ち着かなかった。少しでも強くなりたいと思っていたし、時間があれば剣を振っていた。
しかし、歳を取り、剣を振るのにも苦労し始めると静かな時間というのが大事になってきた。ゆっくりとお茶を飲みながら、昔のことを思い出したり、友と語り合ったりする時間が好きになっていた。
この答えは歳を取ったゆえの答えなので、ラクレームにするわけにはいかない。
グリオットとして答えなくては。
「騒がしいのは嫌いだが、静かすぎるのも落ち着かないな。だから、嫌いではないと答えよう」
「……お顔から察すると、とても好きそうですけど?」
「気の所為だ。そういうラクレームこそ、どうなんだ。こういう静かな場所は? わざわざ用意してくれたのだろうが、おまえにとっては味気ないじゃないのか?」
「そんなことはありませんわ。私が好きでない場所に好きなお方は連れては来ません」
「騒がしい……いや、言い方を変えよう。賑やかな場所が好きだと思っていた」
「そちらは正直苦手ですわね。皆様が何を話しているのか、気になって仕方ありませんもの」
「話が気になるのか?」
「ええ、同じ場所に居るのに私が聞こえてないだけで、私に関わる話がされているかもしれないなんて……怖くて気になりすぎますわ」
「神経質な言葉だな。意外すぎる」
「失礼ですわよ、グリオット様。私はまだまだ子供なのです。大人達の会話は怖いですわ」
「普通の子供なら大人達の会話の内容を理解しようとはしない。理解しないから怖いとは思わない。怖いと思うのはラクレームが賢い証だ」
「褒めてくださるのは嬉しいですわ。……グリオット様は怖いと思いませんの?」
「もう晩餐会に出ているからな。晩餐会の出席者から見れば子供かも知れないが、私としては大人の立場として参加している。怖がってはいられない。逆に相手に怖さを与えて、自分に有利になるように立ち回らなければいけない。公爵家の嫡男としてな」
俺自身の本当の年齢としては、大人を飛び越して老人だ。一つの人生分の経験、それも国王としての経験があるので、貴族達と口でのやり合いに簡単に負けはしない。何を言われても対応出来るくらいに経験は積んでいる。
しかし、これを本来は子供であるグリオットが行っていたとなると大変だったのだろうなという思いが浮かんでくる。
「その心構え、参考にさせていただきますわ。そうだ。初めて私が晩餐会に参加する時は一緒に来てくださりませんか」
「予定次第ではあるが、善処する。今回ここまでよくしてもらったのだ。恩を返さなくてな」
「ありがとうございます。大変感謝ですわ」
ラクレームは礼を言った後、疲れを取るように目を閉じる。暖かな日差しが気持ちいのだろう。
しばらく会話も無く、静かな時間が流れて、俺にも眠気が出始めた頃、コテージの中からレジェスとクローセさんが料理を手に戻ってきた。