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感謝のお礼

 馬車を近くに待機させた後、ラクレームに先導されて歩いていくとコテージが見えてきた。花畑の中に一棟だけ建てられていたコテージにはウッドデッキがあり、地元住民や旅人が一休みする場所という感じはなく、貴族が遊びに来る時のために建てられたように見えた。



「まさか、わざわざ作ったのか?」



 他の貴族所有物という可能性もあったが、それにしては壁や柱が真新しすぎる。



「準備時間がありましたので、周辺の方にお願いして作っていただきましたわ。無駄とは思いませんわよ。グリオット様はこの場所をお気に召したようですし、これからも定期的に来ることを考えれば良い判断ですわ」


「……だとしてもだ」



 思い切りが良すぎるだろ。



「ささ、どうぞ。デッキのテーブルへ。ここからの眺めも良いのですよ」



 ラクレームに促されて、少し高い場所に設置されたウッドデッキへと上がり、テーブル側の椅子に座る。視線が高くなったおかげで、今までよりも先の景色が見えるようになっていた。



「確かにこれはいい景色だ。椅子でくつろぐながら満喫出来る」


「喜んでいただけて光栄ですわ。次は軽食にいたしましょう。レジェス、お願いしますわ」


「只今準備いたします。お待ち下さい」



 レジェスがコテージの中へと入っていく。



「中に調理場があるのか?」


「当然ですわ。食材なども今朝のうちに運んでもらうように依頼してましたの」



 満足げな表情をラクレームが浮かべた。



「お料理でしたら、私もお手伝いします」



 レジェスを追いかけるようにクローセさんが動き出し、コテージの扉に手をかけたところで、俺に確認を取るために顔を向けた。



「一人では手間もかかるだろうし、手伝ってやってくれ」


「はい」



 俺の了承を得て、クローセさんはコテージの中に入っていった。


 

「準備した甲斐がありましたわ」


 

 ラクレームは俺のすぐ隣に椅子を持ってきて座ると疲れたのか。俺の肩に頭を預けるようにして体を傾けてきた。



「準備は大変だったか?」


「ええ、各種準備のために、何度かここまで足を運んでいましたの。場所もこのコテージも私なりには満足の行く出来でしたわ。後は今日の天気とグリオット様が気に入ってくださるかが不安でしたが、両方共に眩しいくらいに明るい結果でしたわ」


「改めて言う。ありがとう。今日、誘ってくれて感謝する」


「その感謝にもう少し甘えさせていただきたいのですが、よろしいですか?」


「別に構わないぞ」



 これほどまでに準備して、楽しませようとしてくれたのだから、多少のお願いは叶えてやるべきだ。



「では、失礼して」



 ラクレームは一度、姿勢を戻すと自分の座っていた椅子の位置を調整する。そして再び体を傾けてくると、今度は頭を俺の膝の上へと降ろした。



「膝枕でいいのか?」


「いいんですの」


「正直、硬いと思うぞ」


「いいんですの」



 二度もいいと言われたので、これ以上余計なことは言わないでおこう。ラクレームが満足するのなら、それが一番だ。

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