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お出かけ当日

 学校生活と個人的に気乗りしない晩餐会を交互にこなしつつ、日々を過ごしていくうちに山へ出かける当日になった。

 前日の晩餐会で疲れていた俺のベッドに、ラクレームがまた侵入してきた慌ただしい朝をこなして、俺は目的地であるビアンコ山へ向かう馬車の中でまだ強い眠気に抗っていた。


 馬車の中、俺の向かいの席にはラクレームとレジェスが並んで座っており、俺の横にはクローセさんが座っている。馬車には残りの人員として、御者と護衛役が外の運転席に並んで座っている。ラクレームの要望を組んで、最低限度の人数でのお出かけになっていた。



「グリオット様、まだ眠そうですわね。昨日の晩餐会は大変でしたの?」


「昨日と言うよりも連日の晩餐会の疲れだな。参加する貴族達の名前を覚えるのも大変だった上に、興味がない自慢話を聞かなくてはいけなかったからな」


「興味がない話を聞かなくてはいけませんの?」


「付き合いだ。無下にしていい相手では無かったからな」


「公爵家であるグリオット様なら断っても良かったのでは?」


「公爵家だから断れないんだよ。いや、父上なら断ることも出来ただろうが、私はまだ嫡男という立場に過ぎないからな。各方面の貴族達に顔を売っておかないといけない時期なんだよ」


「……そろそろ私も晩餐会へ参加する時期ですので、今から憂鬱ですわ。興味がない話は聞きたくありませんし」


「適当に相槌を打っておけばいい。相手は自慢を聞かせたいだけで、感想を求めてくることはまずない。話を聞いている最中は別のことを考えておけばいい」


「別のことですか……グリオット様は何を考えていましたの?」


「剣や魔法の腕をどうやって上げていこうか。いい練習方法は無いかを考えていた」


「ふぅーん、そうですのねぇ」



 俺の返答を聞いて、ラクレームが急に不機嫌になった。



「どうした? 何か気に触ることを言ったか?」


「気付かれていないのでしたら、結構ですわー」



 まだ馬車の移動は始まったばかりだというのに、不機嫌なラクレームとそれなりに長い馬車移動の時間を過ごすのは回避したい。

 何がラクレームを不機嫌にした原因かと考えながら、視線でレジェスとクローセさんに助けを求めるが、二人共、俺から視線をそらした。自分で解決しろとのことらしい。


 ラクレームは俺が考えていたことを話した瞬間に不機嫌になったので、俺が考えていた内容が悪いらしい。だが、事実を口にしただけなのに、何が悪いのだろうか。

 不機嫌になるということは、俺の返答がラクレームの求める内容ではなかったからだ。

 この場でラクレームが求めている返答として考えられるのは……。



「当然だが、今日のことも楽しみに考えていたぞ」


「ですわよね!」



 一転してラクレームがご機嫌になった。正解を言い当てたようだ。

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