高速魔法式
俺が魔法訓練棟に入ると、既にトルテが待ち構えていた。
腕を組んで、俺を睨んでいるので威圧感が凄い。
「睨むな。殺意が溢れているぞ」
「これでも抑えてあげてるわ」
「そうか……」
余計な会話をすると、今以上にトルテの機嫌を悪くしそうだと思い、早々に修練を始めることにした。
「さっそく始めたい」
「私は何をすればいいのよ」
「昨日、使っていた魔法式を教えろ。アレは私が普段使っている魔法よりも発動が早く、放たれた魔法自体の速度も異常だった。誰かに教えてもらったのか、独学かは知らんが、私も使えるようになっておきたい」
教わらなくても使えはするが、実のところ、正しく理解をして使っていない。それでも使えるのは、生前、トルテに教えてもらった際、頭に覚え込まされたからだ。
なので、今は俺が使っている高速魔法式はたぶんこうだったかなという曖昧な魔法式だ。
今後のためにも今一度教えてもらい、より堅実なモノにする必要がある。
「……昨日、使った高速魔法式はまだ未完成よ。かなり荒削りで、一部の魔法用にしか使えないわ」
「それでも構わん。実践等で十分使えることは昨日、確認している。基礎さえ分かれば、後は私の方で改良していく」
「簡単に扱えると思わないで欲しいんだけど」
「フォレノワール家を舐めるなよ。古く由緒正しい血統の中には偉大な魔法の使い手達もいる。血統で受け継ぎし、有り余る才能で成し遂げるのみだ」
「後で自分が発明したとか言って、他の奴らに広めたら殺すわよ」
「盗人のようなことはせん」
「……」
トルテから疑いの眼差しが向けられる。
「不安だというなら誓約書を書いてやろう。おまえから教えられたことについては口外しないとな」
「誓約書ねぇ」
「貴族にとって約束事はとても重要だ。家の信頼問題に関わるからな。ゆえに誓約書での決め事は家の名誉にかけて守る」
「そう言うけど、元平民相手になら破ることもあるんじゃない」
「同じことを何度も言わせるな。約束事は守る。万が一にも破る場合があるとすれば、それは我が家に対する危険を回避するためだ。おまえとの約束事がどう転ぼうと、我が家には影響はない。ゆえに破ることはない」
「……これ以上ゴネるのは、ただのプライドの問題ね。魔法の修練に付き合うと約束はしたし……いいわ。教えてあげる。理解出来るか、どうか分からないけどね」
「理解出来ないわけがないだろう」
トルテは魔法訓練棟の隅にあった黒板まで移動すると、チョークで高速魔法の式を記述し始めた。
それなりの自負は当然ありつつ、書いておりますが、
まだまだ文章が拙い。
そんな中で読んでくださり、ありがとうございます。