魔法修練
「そうだな。では、一度だけ魔法の修練に付き合え」
「意外にまともな内容にね」
「我が屋敷のメイド服を着せて校内を練り歩くでもいいぞ」
「嫌よ。魔法の修練でいいわ」
「おまえの魔法の腕前だけは認めているのだ。ありがたく思え」
「あんたに認められても、ありがたくないわ」
「ふん、ともかくだ。一度だけ俺と魔法の修練に付き合うのはいいんだな」
「いいわよ。明日でいい?」
「勝手に予定を決めるな。私には予定がある」
「予定があるのは私もよ。さっきも言ったけど、嫌なことはさっさと終わらせたいの」
明日はブラウとマチェスを屋敷に招いて、お茶会をする予定をしていたのだが仕方ない。急な予定が入ったと二人には断りを入れておこう。
「分かった。明日だ。魔法訓練棟の使用許可は私の方で取っておく」
「じゃ、私は帰るわ」
「倒れている奴らはどうするんだ?」
「放っておいても、そのうち目を覚ますか。見回りの教師が見つけるわよ」
「……私の方でやっておく」
「それじゃ、よろしく」
トルテはそのまま一度も振り返ることなく、魔法訓練棟を出ていってしまった。
トルテなりに手加減はしたのかもしれないし、自分に敵意を向けてきた相手ではあるが、多少の心配をしてもよさそうだが、そのような気持ちは一切なかったらしい。
思い返してみれば、学生時代のトルテは俺以外への態度がいつも辛辣だった。俺が知らなかっただけで、今回のような件が何度かあったのかもしれない。そうだとすれば、いい加減に嫌になって貴族生徒達への態度を硬くするのは仕方ない。
「しかし、この状況は教師を呼ぶのが一番だろうが……どう説明すべきかな」
倒れている貴族生徒達のプライドも一応考えると、トルテにやられたと真実を告げるのは酷に思えた。