表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/212

慣例

 不穏を感じるラクレームの言葉に俺は眉をひそめた。俺のそんな表情を見たラクレームが満面の笑顔を浮かべて話しかけてくる。



「ねぇ、グリオット様?」


「断る」


「まだ何も言ってませんわ」


「さっきの呟きだけで十分だ。彼女はこの屋敷専属のメイドとして雇っているんだ。他には行かせられない」


「そこをなんとかなりません?」


「ならんな」


「強情ですわねぇ。そんなにあのメイドがお気に入りですの?」


「気に入ってるかどうかではない。もう一度言うが、彼女はここで働くと約束して契約している。その契約を破るわけにはいかないだけだ」


「……そうなんですのね」



 ラクレームは言葉では納得したようだが、不満は残っているようだ。

 ラクレームの願いを断る理由として契約と口にはしたが、本当の理由は本来は亡くなっているクローセさんの行動をある程度制限し、知るためだ。


 俺は我が儘でクローセさんの命を救ったが、歴史を可能な限り、俺が知る通りに進めなくてはいけないため、予測不能な事態を避けなくてはいけない。人、一人の存在の影響というのは予測できない。クローセさんが生きていたとしても歴史に大きく影響は無いのかも知れないが、万が一にでも彼女が生きていることで、何かしら影響は派生して、本来起こるべきことが起きずに、起こらないことが起こるような事態があるかもしれない。


 そのような出来事がなるべく発生しないように、発生しても対応出来るように、クローセさんには俺の近くに居てもらわないと困る。



「あまり無理強いして、これ以上、グリオット様のご機嫌を損ねるようなことはやめておきますわ」


「諦めてくれて何よりだ。」


「あら、諦めたわけではありませんのよ」


「何?」


「私、こう見えても我が儘ですの。欲しいと思ったモノは手に入れてきましたわ」



 どう見ても我が儘だろうという口から出かかった言葉を飲み込む。



「そちらのメイドについては、いずれ私がフォレノワール家の嫁いできた時に改めて私の専属になってもらいますわ。将来的に私のモノとなるのなら、今は我慢出来ます。これならよろしいですわよね、グリオット様」


「何年先になるか分からんが……その時になってみないとな」


「最短で三年後ですわ。グリオット様がよろしければ、学校を卒業後にすぐに」


「……早ければそうだな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ