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自由な方

 貴族の慣例的に婚約しているのならば、婚姻も早い。それを考えると学校を卒業したタイミングで婚姻が行われるはずだ。なので、三年制のこの学校で五、六年先というのは卒業しても数年は婚姻していないことを意味する。

 慣例的とは異なり、だいぶ先の婚姻予定にマチェスが疑問を口にする。



「それほど先ですか? 学校を卒業されたら、すぐだと思っていましたが」


「早めに婚姻する者達は多いが、別に決まりではないだろう。私の婚姻する時期は私が決めるさ」


「さすがですね、グリオット様。周囲に流されずにご自分で判断されている。私なんて親から言われたら、逆らえる気がしませんよ」


「父上に逆らう気はないさ。すぐに婚姻しろと言ってきても、なんとか受け流すつもりだがね。自由に動ける時期を大事にしたいのだ」



 グリオットが早々に結婚していなかった事実はありがたい。

 俺がグリオットの体に入ってしまっている原因の解明にどれだけ時間が掛かるか、分からない現状だ。家庭を持つことを悪いとは言わないが、家庭を持ってしまうとそれだけ束縛される時間が増えてしまい、調査をする時間が減ってしまうのは避けたい。


 

「話を戻すが、マチェスから見たラクレームはどんな人物だ」


「貴族らしくないというのはブラウと同意見です。ですが、それを踏まえて、私は強い方だと感じています。あそこまで我が儘を突き通せる心の強さは少し憧れすらあります」


「強いか……確かにな」



 怖気づくことなく、自分の思うがままに行動が出来るというのは、自分自身の芯がしっかりと心に立っているためだろう。



「憧れるのはちょっと違うと思うけど?」


「ブラウもラクレーム様を見て、羨ましいって言ったことがあっただろう?」


「それは憧れとは違うって。羨ましかったのは……事実だけど」



 ブラウとマチェスは彼らなりに貴族しての不自由さも経験している。慣例として決められたことが多く、自分の意志では行動出来ないことがある。だからといって、平民に対して高圧的になっていい理屈はないが、誰もがそれ相応の立場での苦労をしている。



「二人共、感想をありがとう。今までより少しはラクレームのことが分かった気がする」


「いえいえ、感謝をされることでは。ラクレーム様のことはグリオット様の方がご存知でしょうし」


「そんなことはない。他人の目から見た感想というのは大事だ。自分とは異なる価値観での見え方になるからな」


「……」



 不意にブラウとマチェスが黙り込んでしまう。



「どうかしたか?」


「……いえ、グリオット様が他人の感想が大事という言葉をおっしゃるとは意外だったので」


「……」



 本来のグリオットらしくない言動をしてしまったと後悔する。こいつは他人の、爵位が下の人達の感想、意見に耳を傾け、聞き入れる性格ではなかった。

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