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若い俺との問答

改めて人物名


フォレノワール・グリオット(男):主人公にして本来は悪徳貴族。

              しかし、中身は天寿全うしたはずのバルシュネー・ラティウス


バルシュネー・ラティウス(若、男):主人公の若い頃。まだまだ青臭く、勢い任せで能天気。


アプフェル・トルテ(女):ラティウスの幼馴染で天才的な魔法使い


バックハス・ブラウ(女):グリオットの取り巻き1。バックハス家長女


バックハス・マチェス(男):グリオットの取り巻き2。バックハス家長男


エッケン・クローセ(女):食堂を営む一家の姉妹の姉。現在はフォレノワール別邸のメイド

 学校寮から近隣の屋敷へ引っ越すことになった翌日には、既に学校内で俺が寮から引っ越すことが話題になっていた。

 教室に入るとすぐにブラウとマチェスが涙目に成りながら、駆け寄ってきた。



「グリオット様! 寮から引っ越しされるというのは本当なのですか!?」


「何故です! もしかして私達に何か至らぬ点がありましたでしょうか!?」


「落ち着け、二人共。お前たちに何かあったわけではない。ただ俺が生活するには寮が狭すぎるとずっと感じていたんだ。窮屈に悩んでいたら、我が家が昔、管理していた屋敷が近くにあったので引っ越すことにしただけだ」



 ブラウとマチェス、二人のせいではないと説明すると、二人は少しホッとした表情を浮かべた。



「私達が何かしたわけでなかったのは良かったですが、やはりグリオット様が引っ越しされるのは寂しいです」


「別に学校を辞めるわけではない。屋敷も近いと言っただろう。茶会をする時は呼んでやるから、安心しろ」


「本当ですか!? ありがとうございます!」



 前々からブラウとマチェスはグリオットに対して異様な執着があると感じていたが、寮から引っ越すくらいで、この様子は少々怖さを感じる。

 二人は親からフォレノワール家の人間と親しい縁を保つように命じられて必死なのだろう。


 二人を説得して自分の席に座ると、今度はラティウスが現れた。横にはいつも通りトルテがいるが、少し困ったように眉をひそめている。

 席から見上げたラティウスの顔は、少し怒っている表情をしており、奥歯に力をいれているようだった。



「何か用かな?」



 ラティウスが怒っている理由は想像は付いている。誘拐されて、助かったと思っていたクローセさんが日も置かずに貴族の屋敷に住み込みで雇われてることになったのだから、ラティウスからすれば、裏で何かあったのではと考えるのは普通だ。



「グリオット……クローセさんに何をした?」


「クローセ? ああ、確か新しく雇ったメイドがそんな名前だったな」


「何をしたのかって聞いてるんだよ!」



 ラティウスが俺の机を思いっきり叩いた。打撃音が教室内に響き、気付いたブラウとマチェスが駆け寄ってきたので、二人を手で静止させる。



「いきなりな剣幕だな。おい、アプフェル、どうしたんだ? こいつ?」



 噛みついてきそうなラティウスを放置して、トルテに話を振る。



「こっちなりの事情があるのよ。私もラティウスと同じことをあんたに聞きたいわ」


「……よく分からないが、これ以上、私の時間を取られるのは困るな。答えられる範囲で答えてやろう。新しいメイドに何をしたのか……だったな。別に何もしていない。私が寮から引っ越しをする話は聞いているだろう。学校の近くの屋敷に住むことになったのだが、メイドの数が足りなくてな。あの女は執事の人材募集の際に見つけてきたのだろう」


「メイドくらい実家から連れてくればいいだろう。何人でもいるんだろうが!」



 それなりに筋が通った案をラティウスが提示してくる。



「おまえの言う通り、何人もいる。だから、それらは本家のメイドだ。それぞれに既に仕事がある。多少強引に連れてくることも可能だが、そうなると本家に残ったメイド達の仕事が多くなるだろう。本家は本家で日々メイド達は忙しいのだよ。君等も一応貴族なら分かると……おっと、失礼。元平民はメイドを雇う程度の余裕もないか」


「一言余計だ!」


「ともかくだ。本家のメイド達の仕事を無駄に増やすわけにはいかん。アレらはフォレノワール家に仕えるメイドとしての気品も備えているからな。すぐに変えなど見つからん。そもそもだ。確かクローセというのは町娘だろう。お前達の親族というわけではないはずだ。関係ないはずのお前達が何故、文句を言ってくる?」


「それは……そうかもしれないが」



 口淀んだラティウスを助けるためにトルテが前に出てくる。



「無関係ってわけでもないよ。彼女は私達がよく行っている食堂の娘さんなの。先日、事件に巻き込まれたばかりだから、今回も何かに巻き込まれたんじゃないかって心配してるのよ」


「あの娘の過去に何があったかは知らないが、無用な心配だな。正式に雇用しているだけだ。無理強いはしてない。無理に働かせても、仕事の質が落ちるだけだからな」


「あんたが案外マトモなのことを言うのは正直意外ね。平民のメイドとか酷使しているイメージあったわ」


「おい! 元平民! 今のはグリオット様に対する侮辱だぞ!」



 トルテの俺への発言を我慢できなかったブラウが声を荒げて、トルテに掴みかかろうとしたが、寸前で躱されてしまった。


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