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理由4


「そういうことならば、私だけが行きましょう。私自身、まだ若輩の自覚があるので大きな外交の場に出るのは早いと思っていますが、そこまで要請されるのでしたら仕方ありません。ですが、こいつらは駄目です。礼儀作法がなっていない。外交の場で失礼な態度を見せるようなことがあれば、そのせいで王国の人間が帝国に下に見られてしまう可能性がある。それは絶対に避けたい事態です」


「私としては三人揃ってが希望なんだが……」


「希望は希望です。強制ではないのでしょう? ならば、二人の意志を聞きましょう。お前達、帝国へ行きたいか?」



 ラティウスとトルテの気持ちを確認する。二人には余計な経験をしてほしくないので断って欲しいと願う。



「……私は行きたくはないですね。ある程度自由に見て回れるなら、まだ意欲はあったかもしれませんけど、話を聞く限りでは自由は無いようですし」



「俺も出来れば遠慮します。難しい話は苦手なんで」



 願いは叶ったようで二人共、帝国へ行くことは拒否してくれた。


 学生の身分で外交の場に立つという意味をトルテはともかくラティウスは理解していないだろう。

 帝国に行き、外交会談に付き添うことで様々な経験が得てしまうというのは未来の行動に影響を与えるが、問題はそれだけではない。

 表面上だけの平和外交をしている国の話し合いの場に現れた若い人材なんてものは今後、帝国から重要人物として名前と顔を覚えられてしまう。


 まだ早い。ラティウスとトルテが帝国で有名になるのはまだ先の話だ。

 ここで帝国側に二人のことが知られて、下手に有名になってしまうと俺の知っている今後の情勢と異なる可能性が高くなる。

 不測の事態を回避するためにも二人が帝国行きを拒否してくれたことは非常に良かった。



「二人はこのように言っていますよ」


「うーん、せめてラティウス君は連れていきたかったんだが、強制しても良い場でもないしな。分かった。私が折れよう。元々の可能性として一人も見つからない可能性があったのだ。三人も見つかり、そのうちの一人が同行するというのだから十分だろう。公爵家というも良いしな」


 アマンディーヌは渋々といった態度でため息を付きながらも譲歩してくれた。


「では、そのように。具体的な日時については家の方に連絡をお願いします」


「分かった」



 話し合いが一段落付いたので俺もアマンディーヌも紅茶を飲んで一息つく。

 その間を待っていたかのようにラティウスが口を開いた。



「話が戻っちまうけどさ。結局、俺達の要望ってどうなるんだ? 叶えてくれるのか?」



 そうだった。話が大きくなりすぎて、当初の目的を忘れていた。


「学校内の貴族と平民の区別を元に戻してほしいという要望だな。叶えよう。元通りにする。先程も言ったが、短期間で実施しても無意味な施策だ。いや、死人が出る前で良かったよ。一安心だ」


「笑えない発言は止めてください」



 死人という不用意な単語に強めの拒否を送る。

 


「これは失礼した。施策の撤回についてはすぐに実施する。だが、貴族食堂については準備もあり、すぐには再開出来ないだろう。その期間くらいは我慢してくれ」


「分かりました。元通りになると分かるだけで生徒達の気持ちも落ち着きますから。短い期間でしたら、公爵家の私が先導して問題は起こさせませんよ」


「頼もしい限りだ」



 当初の目的が果たせたことで胸を撫で下ろすことが出来た。ラティウス達を見ると同じ気持ちのようで、ほっとした表情を浮かべていた。

 実際としては一つも問題は解決したが、別の問題が発生してはいるが、それは少し後にちゃんと考えるようにしよう。

 今は目的を果たすことが出来た祝に今夜何を食べようか考えることに集中することにした。

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