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理由3

 ミントの紅茶を飲みながら、これからのことについて考える。



(アマンディーヌの考えはともかく……俺として何より問題なのは前世の記憶で学生時代の俺が外交の場に呼ばれたことがないことだ。帝国に足を踏み入れたのは軍に入隊してしばらく経ってからだったはず。この時期の俺がする経験としては何もかもが早すぎる。恐れているのはこの経験で未来が変わってしまうことだ。グリオットである俺だけが経験するのであれば影響はないが、ラティウス、そしてトルテが経験するには今回の経験は規模が大きい。将来への影響が計り知れない)



 理由は抜きにしてアマンディーヌの中で外交の場に俺達を連れて行くことは決定事項のようなのだが、どうにかして覆したい。



「一息ついて落ち着いただろうか?」



 答える前にラティウスの様子を見ると意識が苦手な味の方に一度移ったおかげで、それなりに落ち着けたようだった。



「続きをお願いします」


「今回の外交会談の王国としての目的は先程言った通り威嚇だ。で、なぜ威嚇するのかという理由だが、それはまだ秘密だ。色々と事情が混み合っていてな。気軽に話せんのだ。ここからの理由については外交の場に同行する時、その道中で教えよう」


「理由を知りたければ同行しろと?」


「そういうわけだが……正直、君らにとっては魅力的な条件ではないな。興味がないと言われれはそれまでの話だ」


「興味以前の問題ですよ。王国の重要機密のようですし、学生の身分で足を踏み入れるのは危険だと思っています」


「確かにな。君等に対する利益は無いか。外交の場としての経験にしても、外交官を目指しているならともかくそうでないなら価値は低い。そうだ、気軽に帝国観光と考えてくれてもいいんだぞ」


「休戦中の敵国です。自由に歩き回れるわけがないです」


「人の提案を却下するのが得意だな」


「思っていることを言っているだけですよ」


「……困ったな」



 アマンディーヌは本気で悩み始めた。

 適当に理由を付けて同意無しに連れて行くことも出来るはずなのに、アマンディーヌは俺達の意志による同意の元で連れていきたいようだ。



「ここまでの話を聞くだけですと、私達が同行する理由はないと思いました。外交の場に行ってもお力には慣れませんし、外務大臣の護衛という意味でしたら、アマンディーヌ校長一人で十分です。自分達の存在はむしろ邪魔でしょう」


「邪魔にはならんさ。君達は私が認めた学生だ。邪魔にならないどころか、役に立つとな。私は強いが一人だ。手が届かない事態も起こり得る。そこをフォローして欲しい」


「他の近衛騎士か軍内部の騎士でもよいでしょう」


「近衛騎士は王族の近辺を守るのが務めだ。動かせんよ。私も近衛だが、王命ゆえに仕方なく帝国へ行くのだ。他の軍内部の騎士にしても支配階級の軍閥貴族連中がうるさくてな。国を守る使命を持っている優秀な騎士を危険な場所に行かせることなど出来ないと反発している。危険な場所へ行くのが騎士の務めだと私は思っているのだが、彼らにとっては違うらしい。王命で無理やりも出来るだろうが、軍閥貴族と王も余計な亀裂を生みたくないようだ」


「危険なことが起こるのですか?」



 話しぶりからして何かが起こった際の戦力を欲しているように聞こえている。

 


「帝国の出方次第だが、可能性は半々……いや、七割か。だが、学生である君達が同行してくれれば可能性は下がると考えている。学生相手には無茶はしないだろう。加えてだ。フォレノワール。君が来てくれることがより大事だ。公爵家の人間である君に万が一があれば、戦争に後ろ足のこの国の貴族達も戦争への意欲を持つだろう。そのような事態に帝国側はしたくはない。帝国はまだ戦争まではしたくない状況だ。君等が来ることで何も起こらない可能性が高まる。私を含め外務大臣ら文官も安全というわけだ」



 気持ちとして納得出来ない部分はあるが、話のスジは通っている気がした。

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