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まだまだ!


「終わりではないだろ?」


「当然だっ」



 アマンディーヌは追撃をしてこない。余裕を見せている。

 本気を出されてしまえば一瞬で終わってしまうので、ありがたいかぎりだ。

 俺が立ち上がるとほぼ同時に反対側に投げ飛ばされていたラティウスも立ち上がった。

 一番勝てる可能性があった初手の攻撃は腕力で破られた。

 ここから勝てる可能性は低い。



「『コム・ウィンド』!」


「うぉりゃぁぁ!!」



 可能性が低いからで、すぐに諦めるような性格を”オレ”はしてない。

 放った風魔法『コム・ウィンド』の弾はアマンディーヌの足元に着弾。着弾の威力で地面の欠片が大量に周辺へ飛び散る。

 飛び散った地面の欠片一つ一つにアマンディーヌを損傷させるほどの威力はない。痛みは感じる程度だ。

 痛みを感じる程度の欠片がアマンディーヌの全身へと襲いかかる。

 アマンディーヌは俺に背を向けると強く地面を蹴り上げて、一直線に向かってきていたラティウスと対峙した。


 襲いかかるはずだった地面の欠片はアマンディーヌが蹴り上げた際に巻き上がった同じ地面の欠片で相殺、いや、アマンディーヌの蹴り上げたことで発生した欠片の方が威力が強い。複数の地面の欠片が俺の方にまで飛んできた。

 アマンディーヌがラティウスへ向かった場合、即座に後ろから追いかけようと考えていた俺の行動を読んで防御と迎撃のために地面を蹴り上げたのだ。


 両腕で顔を防御しながら、飛んでくる地面の欠片の中に突っ込んでいく。

 狙っていたのか蹴り上げられた地面の欠片は大きく、走り出した俺の動きを鈍化させる。

 俺がアマンディーヌに追いつくまでの間にアマンディーヌとラティウスは剣を交えていた。



「ラティウス君。君とは出来れば一対一で戦いをしたかった」


「今の俺があんたと一対一で戦えると思えるほど自惚れてねぇよ!」


「そう言うな。君の父上は強いからな。君にも同様の期待をしてしまうのは仕方ないだろ」


「父さんは父さん。俺は俺だっ!」


「その通り。父親よりも強くなってくれたまえ」



 ラティウスがアマンディーヌと二度、剣を交えたタイミングでようやく追いつき、背後から斬りつける。

 アマンディーヌはラティウスを剣ごと弾き飛ばすと、振り返ると同時に剣を下から斬り上げてきて俺の剣を防ぐ。



「背後からだというに迷いがないな」


「迷う余裕がないのでな」


「正直だな。君の評価は私の中で高くはなかったが、改めなくてはいけないな。やはり人というのは実際に見てみないと分からん」



 視線の先でラティウスがアマンディーヌに斬りかかろうとしたのを見て、俺も合わせて剣を振るう。

 上下左右からのほぼ二人同時の攻撃は通常なら防ぎようがない。躱すのが正解だ。

 だが、アマンディーヌはその場で剣を構えて俺とラティウスの攻撃を捌き切った。どうやったのか剣の動きすら見えなかったが、手にしている剣には重く強い金属の衝撃が伝わっている。


 なんとか吹き飛ばされずに踏み止まり、再度、攻撃をする。

 二人の攻撃をいつまでも捌き切ることは出来ないはず。加えて、トルテの攻撃魔法もある。

 精密に操作されたトルテの攻撃魔法、『コム・ウィンド』に『アクア・バレット』が襲いかかるが、アマンディーヌは笑顔で全てを切り払ってしまった。


 有効打どころか、アマンディーヌの表情一つ変えさせられなかった攻防の中でアマンディーヌと俺達の距離が離れるタイミングが訪れた。



「良い連携を見せてもらった。戦場でも十分に活躍出来る腕前だ。しかし、私が認めるにはまだ足りんな」



 感想を述べるアマンディーヌの息は一つも乱れていないが、俺達の方は全員、息が上がっていた。近接戦闘を仕掛けている俺とラティウスは当然として、俺達に当てないようにと縫うように魔法を制御して放っているトルテも集中力にかなり体力を消費していた。



「これ以上は無さそうだな。終わりにしよう」



 この戦いで初めてアマンディーヌから攻撃の気配が発せられた。

 アマンディーヌとすれば気合を少し入れただけかもしれないが、相対している俺の腕には鳥肌が立っていた。おそらく他の二人も同じだ。

 アマンディーヌからの攻撃が始まる前に動かなくてはっと焦りから走り出す。

 


「『ソル・クルンペン』!」



 トルテが土魔法を唱える声が聞こえた。

 俺は慌てて足を止めてトルテを見る。

 トルテの周囲の地面が盛り上がり、トルテの掲げる右腕の前方に集まり始めて巨大な塊となった。



「はっ!」



 気合の入ったトルテの声と共に土の塊がアマンディーヌに向けて発射された。

 向かってくる自身の身体より大きな土の塊を前にしてアマンディーヌは平然と剣を向けた。

 何に問題はないという自身の態度を証明するかのように大きく振り下ろされた剣は土の塊を真っ二つに切り裂いた。

 剣圧で切り裂かれた土の塊はアマンディーヌを避けるように左右へと分かれて飛んでいく。

 そのまま後方へと飛んでいくはずの土の塊はアマンディーヌの通り過ぎた辺りで真上へと飛び上がった。



「っ!?」



 予想外の動きにアマンディーヌも警戒して、視線を真上へと向けた。

 土の塊を動かしたのはトルテだ。魔法で打ち出したのだから、二つに切り裂かれても多少の動きを制御することは出来る。

 動かせることについては確認済みだ。



「『コム・ウィンド』」



 アマンディーヌの上空に飛び上がった土の塊に対して俺は風魔法『コム・ウィンド』を二つ放った。可能な限りの魔力を込めて放った二つの風の弾丸は土の塊を打ち抜き、粉々にする。粉々になった土の塊は落下すると共に周囲に舞い散り、砂嵐が起こったかのように視界全てを覆った。

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