夜中の報告者
体調が戻りましたので久々の投稿になります。
ふたたび日々投稿していこうと思いますのでお願いします。
自室で寝ていると誰かに呼ばれる声で目を覚ました。
部屋の外から呼ばれているのかと思ったが、どうやらそうではなく部屋の外に誰が居る気配はない。
「なんだ?」
(なんだじゃないぞ! ぐっすり眠りやがって!)
脳内にダダルの大声が響く。
「っ!? ダダルか? どうした急に……なんだよ」
窓が叩かれる音に反応して窓を見るとカラスの姿のダダルが窓辺にいた。
嘴で窓枠をつついているので、部屋の中に入れろということだろう。
「こんな夜中に何の用だ?」
要求どおり窓を開けるとダダルは軽く羽ばたいて部屋の中に入り、ベッドの横に置いてあるサイドデスクに降り立った。
「話題になっているアマンディーヌという奴の様子を今しがた見てきた」
「は? なんで?」
「お前が強い強いと言ってたからな。遠目で見たことがあったが、もう少し近くで観察がしたかったんだ」
「……それで感想は?」
「強いっていう言葉で片付けられんぞ、アレは」
「お前がそこまで評価するか」
「アマンディーヌが寝ている部屋の外から様子を探っていたら、窓から飛び出して俺に斬り掛かってきやがった」
「なっ!?」
ダダルのことを感づいた事実よりもアマンディーヌの突飛な行動に驚く。
「俺の場所をほぼ正確に見抜いていたようだ。剣は俺の真横を通り過ぎていったよ。暗闇に加えて、この小さな姿じゃなかったら斬られてたかもな」
「……」
アマンディーヌの強さが俺の想像を超えていて何も言葉が出ない。
寝ている最中にダダルの気配に気付くだけでなく、場所まで掴んで斬りかかるなど。どのような修練を積めば出来るようになるのか。
「殺気を飛ばしたわけではないのだろうな」
「殺す気などない。本当に様子を見ていただけだ。いや、見ようとしたが正解か。窓に近づいて、ちゃんと見ようとした矢先に斬り掛かってきやがった」
「ダダルの気配か……」
言われて探れば確かにダダルは異様な気配を発している。直接、目の前にして感じ取れば異様だと違和感を覚える程度の気配だ。
その程度の気配なのでダダル本人は特に隠そうとはしてないのだろう。
普通の人間が普通に生活を送っていて気付くものではない。
誰かに命を狙われているという戦場のような精神状態で気を張っていなければ気付かない。
アマンディーヌは常にそのような精神状態だとでも言うのだろうか。
普通に考えて常に命を狙われるような状態が続けば、人は精神と肉体が疲弊していく。日常生活を送るのも苦労する状態になる。
視界に入った人間の何気ない行動が自分の命に関わるかも知れないなどと考えて過ごすのはある種の拷問だ。
「子連れの熊でも、あのようにいきなりは襲ってこないぞ」
「比較対象が熊か。この場合は正しいか。それとも過小評価かもしれないな」
「熊をか?」
「分かっていて聞いてるだろ。アマンディーヌをだ」
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