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高揚

 私が祈りのために一瞬、目を閉じたタイミングを狙って、四方から何かが飛んでくる。


 剣で全て叩き落としたが、剣で触れた感覚からすると細い針だ。

 毒針だろうか。

 暗闇で視認しにくい細い針での攻撃は暗殺者の得意手だ。

 戦う相手を選り好みしているわけではないが、今宵の相手は真っ向から戦ってくれる相手が良かった。

 近接戦闘を得意とする相手であれば、実力差があろうとも剣を合わせることで楽しむことが出来る。

 が、暗殺者ではそれが出来ない。暗殺者の攻撃手段としては、こちらの攻撃が届かない遠距離からの攻撃か、背後からの奇襲が主な攻撃になる。


 背後からの奇襲は私が暗殺者の存在に気付いている以上、接近する判断をする可能性はかなり低い。

 そして残念なことに、ほぼ間違いなく私の周囲を取り囲む暗殺者達はもうすぐ撤退していく。

 初手の攻撃は防いだことで、私にあの程度の飛び道具は効果がないと理解したはず。

 暗殺者として不意を突くという最大の攻撃がすでに出来ない以上、撤退するのは普通の行動だ。


 また別の機会がある。今日この場で必ず私の暗殺を成し遂げなくてはいけない理由はないだろう。



「去っていくか」



 予想した通り、私の周囲を取り囲んでいた気配が消えていく。

 さすがに距離を取られると、気配を掴み続けるのは不可能だ。追いかけるつもりもないので、今宵はもう終わりだ。

 個人的には消化不要ではあるが、こんな夜中に戦える相手を探しに行くわけにはいかない。


 意気消沈しながら、屋敷の玄関へ向かう。


 壊した窓の修理を夜が明けたら頼まなくてはいけない。それまでの間は夜風を部屋に入れながら過ごすしかない。



「っ!」



 玄関の扉に手を掛けたところで再び攻撃が来た。


 暗殺者はもう撤退したと油断している私への毒針の投擲。

 私が気配を感じ取れないギリギリの距離からの攻撃だったのだろう。僅かな風切音が耳に届くまで気付かなかった。

 先ほど毒針の攻撃を受けた際に風切音を聞いておいて良かった。そうでなければもう少し反応が遅れていた。


 危険が迫り、心がひりつき、高揚する。


 私は身をひねって毒針をかわし、ひねった体の反動を利用して手にしていた剣を毒針が飛んできた方へと投げつけた。

 剣は暗闇へと消えていき、何かに刺さった音すらも聞こえてこない。

 屋敷の前には林があるので、最低でも木に突き刺さったはずだ。運が良ければ暗殺者に当たっているだろうか。

 


「結果を見るのは太陽が登ってからしよう」



 誰かに聞こえるようにと独り言を言って、屋敷の中へと戻る。

 最後の最後でそれなりに楽しめた。

 夜明けまでの数刻、良い気分で眠れそうだ。

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