午後、授業
教師の言葉に不服そうにしながらラティウスが席に着く。
その後もつまらそうにしながら授業を終えて、昼を過ごしたラティウスは午後、実技の授業で一転して笑顔になっていた。
誰よりも早く準備運動を終えると待ちきれなかったという表情で俺に詰め寄ってくる。
「グリオット、勝負だ」
「勝負? いきなり何を言い出すんだ。これから授業だ。準備運動が終わったなら、大人しくしておけ」
「これからの授業で勝負だって言ってるんだよ。剣の組手で俺と戦え」
ラティウスの右手には訓練用の剣が握られており、今すぐにでも戦いたがっているのは分かった。
「落ち着け。気概は認めてやってもいいが、今日の実技は剣技ではない」
「……はっ?」
俺の言ったことが理解出来ずにラティウスは気の抜けた声を出す。
「今日の授業内容についてアプフェルから聞いていないのか」
俺は視線をトルテに送ると、彼女は困ったように頭を抱えていた。
「私は伝えたわよ。しばらくは馬術の授業だって」
「な、なんでだよ! トルテ!」
「あんたが休んでいる間に剣技の授業は一旦終わったの。一学期の実技は剣だけじゃなくて、槍術とか馬術とかあるって聞いてたでしょ。今は馬術の期間なのよ」
「じゃあ、剣で打ち合いは出来ないのか?」
「出来ないわよ」
「ほ、ほら、馬上での斬る合う練習とか」
「言葉が物騒よ、あんた」
トルテが困っているようなので助け舟を出すことにした。
「馬上で戦うことは一学期はないぞ。未熟な腕では危険だからな。しっかりと基礎を身に着けてからだ。どれほど戦いたいんだ? 蛮族か。おまえは」
過去の自分としても情けない。
これほど戦闘狂な言動をしていただろうか。
「元平民! グリオット様がわざわざ教えてくださったのよ。お礼の述べたらどう?」
「そうだそうだ!」
俺の付き添いのように側に控えていたバックハス子爵家の双子の姉ブラウが強い口調で言い放つと弟のマチェスが同調する。
「礼? いつものように馬鹿にしたようにしか聞こえなかったが?」
「なんですって!?」
「構わん、ブラウ。元平民に礼の一つを求める手間が惜しい。馬のところへ行くぞ、二人共」
このまま口論を続けば騒動が大きくなると判断して、やや強引に切り上げるとその場から馬小屋の方へ行くようにした。