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「拒否しようがないから受け入れるしかないのが現状だな。慣れるしかないか」



 俺はため息を付きながら、体全体を預けるように椅子に深く座り込む。

 肉体的な疲れも精神的な疲れも残っている。



「ようやく観念したか」


「その言い方だと私が負けたような気する」


「根負けはしているだろ。うちのご主人に」



 即座にラクレームの満面の笑みが思い浮かんだ。



「自分が優位なところで逃げた。勝ち逃げしたようにも思える。おまえについてもラクレームが付きまとわれるのが嫌だから、置いていかれたというのが真実なんじゃないか?」


「……」



 勝ち誇った口調のダダルに一矢報いようと、思いつきで口にした言葉にダダルが黙ってしまう。



「実はそうなんじゃないかと思っている部分がある。ご主人ならやりかねないとな」



 ダダルは鳥の姿をしているので表情などは分からないが、頭を幾分か下げて落ち込んでいるように見えた。



「思いつきの言葉だっただけに、ショックを与えたのなら少し罪悪感を感じてしまうな。しかし、冷静に考えるとラクレームならやっている可能性がある」


「だろう? ご主人との付き合いはお前の方が長いし、真実味が強い」



 本当の付き合いの長さとしてはダダルとさほど変わらない。

 しかし、ここ最近振り回されてみて、十分に実感しているラクレームに対する価値観だ。



「付き合いが長いといっても……いや、長いからこそ分からないことが多い。前に私の魂と肉体の形が違うと言っていたが、ラクレームはどうなんだ?」


「婚約者を規格外扱いか?」


「私の価値観では彼女の行動は規格外だ」


「それは認める。だが、ご主人の魂と肉体の形は一緒だ。おかしいところはない」


「本当か? 主人だから庇っているわけではないんだな?」


「庇う理由はない。彼女は素晴らしい人間だからな。この俺と代償無しで契約するほどの魔法の才。仕えることに不満はない。今の待遇には不満はなくはないが」


「認めてるわけか」


「お前もそうだろう? 先日の一件、ただの貴族の娘であれば思いつきもしない。仮に思いついたとしても実行しようとは僅かにも思わない」


「ラクレームの意思の強さと行動力は認めている。危なっかしいほどに」


「目の先に置いておかないと、何時危険な目に合う分からない緊張感があるからな」


「まったくだ」



 ダダルとは仲良く過ごせていけそうだと感じた。

 大騒がせで大仰で大事な女性が俺とダダルの間を取り持ってくれているらしいからだ。


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