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腹黒悪徳領主さま、訳ありメイドたちに囲われる  作者: 溝上 良
最終章 バロールとナナシ編

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第88話 クビ、できなくなっちゃいましたねぇ……

 










 ナナシの言葉を聞いて、俺は愕然とした。

 俺を……殺す……?


「お、俺の抹殺、だと……!? 正気か!? 世界の損失だぞ……!?」

「自己評価化け物ほど高くて笑えますね」


 そこらの有象無象なら全然好きにしてもらって構わないが、俺は違うだろ。

 たとえ世界中すべての生命を犠牲にしてでも守らないといけないのが、この俺だ。


 だというのに、空から降りてきたへんてこイケメンは、俺を殺すと言う。

 とんでもないことだよ、これは……。


「ふむ……。私の名は……告げる必要もあるまい。何せ、知っておく必要もないのだからな」


 俺たちを見下ろしながら傲慢に言ってのけるネームレス天使。

 プライドだけ高そう。


 まあ、別に自己紹介はいらないけどな。

 俺も、どうでもいい奴の名前なんて覚える気ないし。


「さて、私の前任天使よ。何ともまあ無様な姿だな……。それは、人間が誰かに傅くための従属する者の衣服だろう? 偉大な天使の格好とは思えんな。天界に連れて帰ることになるだろうが、おそらく強烈な罰があるだろうから覚悟しておけ」


 ネームレス天使がナナシを見ながら冷たく吐き捨てる。

 ボロクソ言っているな。ナナシはノーダメみたいだけど。


 ただ、どうやらこいつのことは殺す気はないらしい。

 天使同士で戦うことはあまりないのかな?


 俺は殺すのにナナシは殺さないとか、納得いかん。


「そして、お前があの愚かな人造人間か」

「誰のことかな? 愚か者とかいるっけ、ここに」

「人造人間と言っている時点でご主人様だけですよ」


 ナナシに諭される。

 いや、愚かって……。俺を見てどこにその要素があるんだよ……。


 眼玉ついていないようでかわいそう……。


「なるほど、近づけば分かる。悍ましい匂いだ。反吐が出る」


 なんだこいつ。殺していいの?

 俺を見て鼻をつまむネームレス天使。


 あー、もうだめだわ。俺の中の邪神バロールが大暴れしてるわ。

 これは許されないわ。さようならだわ。


「世界の理を崩す者よ。せめて抵抗せずに死ね。さすれば、苦痛をできる限り排除して殺してやろう」


 カッと光を放ち、それは槍の形状になる。

 光の槍。何とも仰々しくて格好いい武器じゃないか。


 そんなものを見せられれば、こちらも黙っているわけにはいかない。


「よし、ナナシ」

「はい」


 俺が声をかければ、ナナシがスッと目を細める。

 俺から言うことは、とても簡素で短いものだった。


「やれ」

「かしこまりました、ご主人様」


 丁寧に一礼をし、ナナシは前に出る。

 ネームレス天使と同じく、バッと広がる白い翼。


 そして、ナナシも光を集め……槍を作った。

 だが、それは異形の槍だった。


 真っ白な光の槍を持つネームレス天使に比べ、ナナシの持つ光の槍は黒。

 どす黒く、光をすべて吸収してしまうような、悍ましい闇の槍だった。


 その槍に驚愕しているネームレス天使に、ナナシは無造作にその槍を投げつけた。

 凄まじい勢いで投擲されたそれはたやすくネームレス天使の腹を貫通。巨大な穴を身体に開けさせた。


 そして、その勢いのまま飛んでいくどす黒い槍は地面に到達し、強烈な爆発を引き起こした。

 空高く貫くような黒い光の柱が立ち上る。


 木々がへし折れ、大地が砕けた。

 ……たった一つの槍の投擲。


 それだけで、仰々しく降り立った天使は死に、ついでとばかりにえげつないほどの環境破壊も起きた。

 やりすぎだぞ……。


「……言っておいてなんだけど、お前強すぎない?」

「まあまあまあまあ」


 無表情ながら自慢げなナナシ。

 どうすんだよ、こいつ……。すっごく危ない奴じゃん……。


 どうやってクビにしようかな……。

 そんなことを考えているナナシが、なんとなしに不意に言ってきた。


「さて、これでご主人様も完全に後に引けなくなりましたね」

「……んあ? どういうことだ?」

「だって、私はご主人様の命令で天使を殺害したんですもん。天界から、当然敵対したとみなされていますよ。つまり、私を追放したところでもう遅い。天界との血みどろ大乱闘の始まりです」


 俺は唐突にハッとさせられる。

 ネームレス天使がやけに高圧的でイライラとさせられて、思わずナナシにぶっ殺すように命令してしまった。


 それが、俺の思考だけでなく、ナナシ自身に誘導させられていたとしたら……?

 そもそも、普通のメイドの仕事でさえサボるような女だ。


 今回に限って、なぜか文句ひとつもなく俺の命令を遂行した。

 その理由は……貴重な戦力であることを知らしめると同時に、俺に強大な敵を作り出し、決してクビにできないようにするため……!?


「き、貴様……!!」


 俺は、ここで初めて、ナナシの笑顔を見た。

 そう、恐ろしく邪悪な笑顔を。


「クビ、できなくなっちゃいましたねぇ……」




次回最終話です!

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その聖剣、選ばれし筋力で ~選ばれてないけど聖剣抜いちゃいました。精霊さん? 知らんがな~


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― 新着の感想 ―
クソワロタwww ナナシの笑顔、どんな感じだったのかなぁ( ´∀`)
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