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腹黒悪徳領主さま、訳ありメイドたちに囲われる  作者: 溝上 良
最終章 バロールとナナシ編

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第85話 人間じゃないですよね?

 










「本物の、天使……?」


 ポツリと呟くのは、信じられないといった様子の殺人未遂犯、コノハである。

 確かに、ナナシがそんな存在だったということは俺も知らなかったので驚いてはいるのだが……。


 それよりも、俺への誹謗中傷をぶちまけやがったことが気になって仕方ない。


「いや、そんなことよりお前、俺のことボロカスに言ってくれたな。なに? 処刑希望なの? 許さんぞ貴様」

「私、かなり衝撃的な告白をしたつもりなんですけど、自分がバカにされたという方が重要なんですね。さすがご主人様」


 やれやれと首を横に振って、白い翼を消すナナシ。

 はやしたり消したりできるのは便利そうだ。


「天使って……。天使教が信仰している、あの天使ですか?」

「はい。と言っても、天使は複数存在するので、私に信仰が向けられているかは知りませんが。ほとんど興味なかったですし」

「存在していたんだにゃあ」


 アシュヴィンの問いかけにナナシが答え、アルテミスがほへーっとする。

 天使教……? 全然詳しくないけど、あったなそんな宗教。


 カルトっぽいから嫌いなんだけど。

 それの信仰対象とかろくでもないだろ。ナナシもクソということか。


「……それで、どうして天使がバロールちゃんを狙うのよぉ?」


 コノハが激しく警戒している猫のように唸り、ナナシを睨みつけている。

 俺が聞かなくても聞きたいことを聞いてくれるのは助かる。


 問いかけを受けたナナシは、はあっとため息を一つ。


「天使って、なんだかすっごく偉そうなんですよね」

「自分で言うのか」

「なんだか知らないですけど、世界を管理しているようなつもりでして。それで、世界をうまく回したい、ということで、ちょっと異質なものがあったりすると、それを排除しようとするんです。それで、私が送られたということですね」


 世界の管理、か……。

 想像もできないなあ。やる気もないし、したいとも思わないし。


「……その異質っていうの、なニ?」


 イズン、なんだか怖い……。

 いつものバカみたいな言動はどうした?


「ご主人様のことですよ。皆さんは知らなかったようですが……」


 俺をじっと見てくるナナシ。


「だって、ご主人様。人間じゃないですよね?」


 その言葉が聞こえると、シンと静まり返る。

 全員が俺を、目を丸くして見ていた。


 その視線を受けながら、俺は平然と頷いた。


「んー……。まあ、そうだな」

「そうなの!?」


 メイドたちの驚愕の声が響き渡った。










 ◆



 訳ありメイドたちがじっとこちらを見てくる。

 怖い。こっち見るな。


 そんな中、コノハがわたわたと慌てた様子で近づいてくる。


「えっ、えっ……? どういうことぉ……? バロールちゃん、人間じゃないって……」

「そのままの意味だけど?」

「そのままの意味ってどういうことぉ!?」


 声を張り上げて驚きをあらわにするコノハ。

 ……そう言えば、言っていなかったっけ。


 別に大したことでもないと思っていたし、そもそもこいつらのことを信用したことなんて一度もないから、話していないのも当然か。

 アシュヴィンがおずおずと話しかけてくる。


 完璧褐色メイドにしては珍しい反応だな。


「その……バロール様は、魔族ということでしょうか……?」

「ふっふっふっ……」


 意味深にほほ笑み、俺は周りを見渡してから言った。


「違うけど?」

「じゃあ、なんにゃのにゃ!!」


 がるるるっ! としがみついてくるアルテミス。

 何だお前!? やんのか!? 俺は一瞬で負けるぞおおお!


 今度はイズンがこちらを気遣うようにしながら聞いてきた。


「言えないことだったりすル?」

「いや、別に? 聞かれていないのにペラペラ話すことはしないけど、隠すことでも……あるか。こればれたら貴族の爵位とられそうだし。やっぱり、この話はなかったことで……」

「無理だけどぉ!?」


 ちっ。そう簡単にはごまかせないか。

 別に出自なんてどうでもいいのだが、公になれば今の地位を揺るがしかねない。


 それは困るのだ。


(ちっ。てめえのせいで弱み見せる羽目になったじゃねえか)

(これだけ慕ってくれているメイドたちに一切心を許していないの、さすがです)


 当たり前だよなあ……。

 俺、この世界に信頼できる奴、俺以外に存在しないんだもん。


 本当はうやむやにしたいけど、内容が内容のせいで、さすがにこの人数を同時にごまかすのは無理だろう。

 イズンだけなら何とでもなりそうなんだけど……。


 仕方ないな……。


「あー……。まあ、はっきり言うと……」


 ぼりぼりと頬を指でかきながら言う。


「ホムンクルスって分かるか? めちゃくちゃ簡単に言うと、錬金術とか魔法とかで作られた人造人間なんだけど」


 うんうんと頷くメイドたちに、俺は言った。


「それが俺」

「えぇ……?」


 ぽかんと口を開けるメイドたち。

 まあ、いきなり人造人間とか言われても意味分からないわな。


 ここでナナシがスッと入ってきて、余計なことを言ってくれた。


「もっと言うと、史上最悪の邪神バロールを喰らった人造人間です」

「くらっ、た……?」


 言い方ぁ!!




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