ゾンビ美少女コンテスト
俺たちは追い詰められていた。
美少女の群れは建物の廊下を埋め尽くして俺たちに迫ってくる。
「くそっ! なんて美少女だ! キリがねぇ!」
「もう無理だよ、ブッチー……。大人しく食われよう」
「弱気になるな、裕太! 絶対にここを生きて出るんだ!」
目の前まで美少女どもが迫ってきている。
どいつもこいつも似たような美少女だ。キリがねぇ。
こん中からもし一人だけグランプリを選べと言われても困っちまうぐらいだ。どいつもこいつも美少女だ。飽きた。
ライフルの弾も残り少ない。
ここはアレを使うしかねぇ。
『研磨剤乙』──
ピカールにそっくりな白いワックス状のそれを、俺は顔に塗りたくった。
ボキボキ、ギシギシ──
体の中からヤバい力が漲ってくる。
コイツは人間の中に眠る滅茶苦茶な能力を発現させるクスリだ。
「ウオォォォ!」
異能力だ。異能力が俺に発現した。
美少女が何だってんだ。どいつもこいつもかわいくてキリがねぇ──が!
「千年に一人の美少女! キミこそがゾンビの奇跡!」
俺は一人だけ選び出した。並み居る似たりよったりの美少女の中から、テキトーに。なぁに、どれを選んでも美少女だから、テキトーでいいのさ。しかしそれでもクスリの力を借りなけりゃ選び出すなんてことは至難の業だった。
「あたしですかあっ!?」
俺が選んだゾンビがぴょんぴょん跳ね、涙を流して喜び出した。
「ありがとうございますぅっ!」
落選した美少女どもがガックリと肩を落とし、再び立ち上がると、俺のほうへ群がってきた。
「なんであたしじゃないんじゃ〜」
「殺す殺す……ブッ殺すぅ〜」
やれやれだ。
異能力でも発現させなけりゃ、一番の美少女なんて選び出すことも出来なかったってのに……
群がる美少女どもに、俺は寄って集って噛みつかれ、肉を食いちぎられた。
横を見ると裕太もグランプリの美少女に嬉し泣きされながら食われている。
どの道、美少女どもには勝てなかったってことか……。
薄れ行く意識の中で、俺は気づいた。
似たりよったりの美少女どもの中に一人だけ、野に咲くたんぽぽみてぇな、可憐な少女がいることに。
あぁ……、あれを選べばよかった。
あの子はどこか違ってる。
何が違うんだ?
あぁ……、そうか。
俺の初恋のあの子に似てるんだ。
俺はなぜ、あの子を見つけて選ぶことが出来なかったのだろう。
そう思ったが、もうどうすることも出来ないのだった。