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凍星

作者: 青海夜海

青海夜海です。

大学の課題で書いたやつです。

鳥の声から連想して執筆しました。


 誰かが呼んでいる、

 静謐な森の空を貫いて冷気のような鋭いひと鳴きが走っていく。

 ただ一つ心を急かしながらも溶かすように、朝露の衣を纏って追い縋る。

 時に大気を裂き、水面を奔り、影に抱かれ、木漏れ日を目指す。

 滲み出す冷気が通り過ぎる木々を目覚めさせ、遠く昇る僅かな朝日を瞼に起こす。

 抱き留めた心を通わせ、一通の手紙のように駆け抜けるひと鳴きはどこかを目指していた。

 いつか見覚えのある樹木が手招く。揺蕩う妖精が光であっちあっちと指をさす。獣が生い茂る草木に道を築き水滴にその声一つを記録する。

 凍えるようなひと鳴きは、されど届かず落ちるひと鳴きとなり、更なるひと鳴きがその道を辿っていく。

 裂かれた大気を抜けて、波紋残す水面を通り、木漏れ日が覆っていく影を奔る。手招く樹木に感謝を伝え、妖精の光に導かれるがまま、数秒前のひと鳴きを水滴に見て獣道を突き進む。

 それでも音は届かない。

 懸命に何度も何度も誰かは叫び。静謐を貫く冷気のような甲高いひと鳴きを。

 駆けて賭けて欠けて駆けて。

 鳴いて泣いて哭いて鳴いて。

 ひと鳴きは何度も森を突き進んだ。

 辿り着きたいその場所へ。求めるその者へ。


 寂しさが募っていた。それは冷気のような恐れとなって焦燥を感じさせた。そのひと鳴きはいつだって優しくて穏やかなはずなのに。その冷たい声音を知らなかった。

 跋扈する草木の狭間から、一縷の望みのように届いたひと鳴きは正しく凍星のよう。冷たく遠くけれど暖かな光。

 水滴を絡め木漏れ日を纏い妖精の祝福を受けたひと鳴きは涙のようだった。

 伝わる感情。問いかける声音。名を呼ぶひと鳴き。

 鮮明な空を目に焼き付け、焦がれる心が叫び出す。

 飛べぬ矮小さで、臆病な不甲斐なさで、愛求める幼さで。

 共鳴させるように震えながら叫ぶ。瞬く微細な閃となり森の中を駆け進む。

 緑を浴びて、心を沸き立て、光焦がれ星目指すヨタカのように。

 孤独に泣いたひと鳴きが探し求めるひと鳴きと共振し合って薄明に木霊する。

 互いの名を呼び合い、不安の中に愛を芽吹かせそれは衝動となって駆け出させた。

 まるで己がひと鳴きのように、音と音が繋がった夜明けの道を飛んでいく。

 声を追い求めて。


 黎明の空の下、ただ声一つで愛を知る。

 ただ声二つが一つとなって。

 その声一つで愛語る。


ありがとうございました。

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