7 偵察
その頃ジョブのコンプに励む橘葵がいる未開の森に
尋常ならざる魔力が感知されたとして
その未開の森を保有するディンガル国の国王に報告が上がった。
その報告を受けた国王からその魔力の元を探るべく、
冒険者ギルドへと偵察の依頼が出された。
騎士の派遣も考えたが未開の森と言う場所がらから
冒険者の方がその結果も早く出るだろうとの判断だった。
ディンガル王国は西に高くそびえる山脈があり、
その裾野に未開の森が広がるため
国の広さでいえば大国に引けを取らないが、
その森の開拓が遅々として進まずにいるために小国扱いされていた。
その開拓が進まない原因は、
国の半分以上を占める未開の森の広さと
そこに生息する強い魔物の存在もそうだが
肥沃なる土地を持つことから農耕が盛んで、
人口のほとんどが農民だった。
そしてほのぼののんびりとした生活を好む人ばかりだったため
開拓にまで手を出すことなく現状で満足していたのだ。
それは前国王も同じだったが、
今は代が変わり政策も変わりつつあった。
肥沃なる土地も年々やせ細り始めたというのに、
その解決策はなかなか見いだせず
新たな農地を確保すべく未開の森の開拓をようやく進めることにした。
そしてそのための資金として税が上がり、
徐々に国民を悩ませ初めていた。
そんな状況の中、尋常ならざる魔力の持ち主=驚異的魔物の存在
などと言うことになったら対応できる兵力もそれほど無く、
この国の終わりの予感すらある。
そんな不安に駆られながら国王は報告を待つことしか出来ずにいた。
一方冒険者ギルドでもやはり尋常ならざる魔力の持ち主が
狂暴なる魔物の誕生かそれとも魔王の誕生かと騒がれたが
どちらにしても討伐できるほどの実力の持ち主
いわゆる最高ランク冒険者は不在だった。
そもそもこの国の冒険者は
大概が村や街のそばの弱小魔物の討伐で細々と生計を立てるものが多く、
未開の森に入ってまで命を懸けて冒険をするなどと考える者が少なかった。
またその少ない部類の冒険者は
高ランクとなったとたんに
ダンジョン都市として有名な他国の町に出向いたり
または商会などに雇われあちこちの都市を巡ったりと
自由に過ごしているからだ。
かといって国王からの依頼を断る事も出来ず、
苦渋の策でギルド長自らが出向くことになった。
現役を離れたとはいえギルド長もいわゆる高ランクの冒険者だったのだ。
一人では危険だと周りに強く反対され、
最高ランクとは言えないがそこそこの高ランク冒険者3名を指名し、
早速偵察へと向かうのだった。