43 テクテク歩く
村は麦畑で覆われていた。
家はポツンポツンと所々に点在し、
中央付近に何軒かが密集した感じの本当にのどかな農村と言った感じ。
その密集している建物の内の一軒に看板がぶら下がっている。
多分この村唯一の何でも屋と言うか雑貨屋なのだろう。
早速中へ入り店主とみられる老婆に声を掛ける。
「あの、肉や素材を買い取って貰えると聞いたのですが?」
「ああ、買い取っているよ。
肉も有難いが、毛皮ならこれから必要になるしいくらあってもいいよ。」
「薬やポーションもあるんですが、それも買い取って貰えますか?」
「それは嬉しいね、この辺じゃなかなか手に入らないからね、
あんたはもしかして錬金術師かい?」
「はいそうです、分かりますか?」
「私の知り合いに錬金術師が居たからね。」
そんな話をしながら肉や毛皮や
それから薬やポーションなどを10個づつ出し様子を見る。
「もう少しあるならもっと欲しいね、特に毛皮が欲しい。」
老婆がそう言うので、追加でもう10個づつと毛皮多めで出した。
値段の交渉はしない、
在庫一掃処分のつもりもあるしお金に困っていないから。
「それからこのリンゴ村の外れの方で見つけたのですが、
これは誰かの持ち物だったりしますか?
黙って頂いてしまったのですが。」
「ああ、あの山の麓の方にある木の実だね。
自生している物だから構わないさね、
村の者は忙しいからわざわざあんな所まで取りには行かないしね。」
「そうなんですか?
でもこれってすごく美味しいし料理にも使えてお酒にもなるんですよ。
私の国ではこれを食べたら医者いらずと言われ有難がられ、
この木を一面に植えて仕事にする人も居たくらいです。」
「そうなのかい?」
「ええ、良かったら畑の合間にでも植えてこの村の名産にしてください、
私が他の街に行っても食べられる位に。」
「それじゃ村長にでも話してみるかね。」
老婆は何故かふふふと笑った。
その他にも麦の肥料に貝殻の粉が良いとか、
チャリオットにお願いと称して話した話をし、
そして近くの村の情報を聞いてから老婆に別れを告げた。
ここは名も無き村、
外に出れば麦畑が一面に広がっている。
食堂もなければ居酒屋も宿屋もない。
私の様な旅人さえも珍しいのだろうに老婆は変な詮索はしなかった。
と言うよりむしろ親切だった気がする。
次は海辺の村、そこもこんな風に優しい村だといいな
歩いて3時間ほど掛かるらしいけど。
「海鮮が楽しみだ!」
心の中で大きく叫びながら海の方角に向かって歩き出す。
広い平原と言っても長く緩い勾配をいくつも越えながら
テクテクと歩く。
初めての歩きの旅、ゆっくりと変わる景色を眺めながら
テクテク歩く。
テンプレならここで
盗賊や魔物に襲われる商隊とかご貴族様と出会うとか、
そんな展開があっても良さそうなのに、
などと妄想を膨らませながら
テクテク歩く。
やっぱりゴーレムの核で馬を作れば良かったかも、
そんな事を考えながら
テクテク歩く。
歩いて旅をするって決めたんだから歩くよ私は。
テクテク歩く。
何のために?
旅を楽しむため。
今楽しいか?
テクテク歩く。
下手に目立ってしまわないため。
それだったら別の方法もあるんじゃない?
テクテク歩く。
テクテク歩く。
折角称号のお陰で認識されづらくなっているんだから
別に良いんじゃない飛んでしまっても、
街の外の目立たない所で降りれば。
テクテク歩く。
私は一体何と戦い何に拘っているんだ?
良いよね飛んでも。
歩いて冒険をすると言う決意は早くも脆く崩れ去ったのだった。
読んでくださりありがとうございます。
しばらくは1日何度かUPさせて頂きます。




