この世の行く末、果たして何色か
世の中、泰平と言えども、常に事は起こる。また、万事始まりと終わりを知ることはできぬ。後から振り返って初めてわかるのである。
大坂の一画で今、気づかぬうちにことが始まろうとしていた。
奉行所は主犯を舟と思ったものの、死人がいなかったことで軽い処置となった。
お舟は家を勘当になり遠くの家で下働きを、芳平も香太も浪人になり二人で旅をしているようだった。
どこにも仕える当てがなくなった安は、仕方なく段助のところに転がり込んでいた。
親代わりの二人の真相を知った安を段助がどれほど気を揉んで慰めたか、筆舌に尽くすことはできない。とはいえ、安が徐々に元気になり元来の無邪気さを取り戻していくと、段助はヒヤヒヤすることも増えた。
「安、そう言えばこの絵、あげるよ」
段助が安に巻いた絵を渡した。広げてみると、一対のカワセミが池に飛び込むところだった。
「芳平様もお舟様も、もう会えるか分からないけど、その思い出にはなると思って」
芳平と舟に思うことがあるのか、少し不満そうに段助が言った。一方の安は目をみはる。生き生きとして、艶やかに濡れた羽のカワセミで、今にも動き出しそうだったからだ。
「キレイな色や」
段助がそれに頷く。
「あのな、師匠と芳平様の言ってたこともわかったんや。色は一色やないんや。だんだんといろんな色に変わるもんやったんや」
青に群青に緑に、多彩な色に移り変わる羽。これを描くために、完成まで時間をかけていたのだろう。
それにしても、色の境目がわからんなァ。こりゃァ舟様の持ってた櫛みたいに綺麗や、と安は思った。
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