噂は噂
占い通り狂い死にした芳平の妻、お舟が、芳平のはとこと結婚をする。この事実は瞬く間に堺中に広がった。
人々は好き勝手に噂をするものである。例の白鳥の社の前の市でもこんな話をする人々が。
「なァ、お前は聞ィた?」
「ああ、お舟様の話か?」
「せや。なんでも、再婚するって聞いた」
「ほんまかいな。でェ、相手は誰や」
「香太、菟原香太様っちゅう話や」
「しかもなァ」
「……こんなこと言うたらあかんけど、芳平様よりもエエ男やで」
「シィ! けったいなこと言うたらアカン」
「でも、芳平様は家柄と人がええだけの奴やった。それがどうだ? 香太様は分家筋から、その手一つでのしあがったようなもんだぞ。まだ芳平様よか、偉かねえが、能力は確実にあちらの方が上や」
「それに、昔の噂を知らんか? あいつらは三人とも仲が良かった。それを取り合ってたっちゅう」
「そうやった。そうやった」
「香太も、ええもん捕まえたなァ。昔は貧乏だ貧乏だゆうてたがのう」
「しかし……。芳平様もこんなこと言われるくらいやったら、果たして成仏できてんのか?」
「それもそうや。急に狐がついたなんて言われたって、そんなにすぐ狂うもんかね」
「じゃあ何や。誰が怪しいっちゅうんや」
「そりゃ、この結婚で得したのは誰やっちゅう話や」
しかし、噂は噂。いくら火のないところに煙は立たぬといえど、真相を明らかにすることはできなかった。




