表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/21

知られちゃ困るはかりごと

時は今より昔のこと。江戸で徳川の将軍が世を治める時代である。


戦乱の末の平和。町は栄え、人も豊かに暮らすこと津々浦々。無論、大坂も例にもれない。

道を見れば、たいそう艶やかな着物の娘が道をゆき、朗らかに笑う。その隣には二本差しの侍。その刀は腰に挿されるも抜かれることはなく、鞘のみが光る。


かつてのような世の荒みを心配する者はない。

しかし、万事が黒か白かの二つでない、これが世の常。忘れてはならない。太平の裏でも、事が起こるのである。


※※


白の小袖の男が一人、寝具を引きかぶって寝ようとする真っ暗な夜。

手に持ったろうそくをフゥッと消そうとした時、音もなく襖がひらいた。

驚いた白小袖の男は灯火を襖の方へ向けた。何かが光る。さらに火を近づければ、鈍く光る黒い目が浮かび上がった。


「ああ、あんたか」


白小袖の男は安心したようで、火に浮かび上がった男を手招きした。

こちらの男は灰の着物の着流しに、黒の羽織り。闇に溶けるような格好である。


男は滑り入り、そのまま白小袖に近づいて耳打ちをした。


「なんだと?」


耳打ちされた白小袖がギョロリとした目を開く。

顔色が驚き、ついで不安へと変わった。

慌てたように襖から顔を突き出して辺りを伺った後、硬く襖をしめた。


無論、この二人の男の密会に気付く者は誰もいない。


ここは屋敷の一番奥まったところであり、皆、寝静まっている。

しかし、二人は声を高くすることはなかった。膝と頭を付き合わせてヒソヒソと話合いを始めた。

誰にも知られてはならぬのが、はかりごと。用心を重ねに重ねる、それが道理。


しばらくして訪ねてきた黒衣の方が立ち上がった。それを見上げるギョロ目の白小袖が口を開く。


「酒の色なら、ものによって違んやから、多少色が違っても問題ないやろ」


黒い方も口を歪ませた。カッカッと乾いた笑いが忍び漏れる。


「その通りや。中身が何かなど、誰にも分からへん」

「で、夜に川へ」

「そう、落ちる」

「誰か追いかけてくると思うか?」

「大丈夫やろ」

「そンなら、明日の深夜三更に」

「ああ––––苦労かけてるが、頼むぜ」


そう言って黒衣の男は襖を開けて消え去り、一方の白小袖の男は何事もなかったように、寝具に身を入れ、今度こそフウッと明かりを消した。

真っ暗な闇。


深夜の大坂、こうして事は起こってゆく。


実は、はじめての投稿です!緊張してます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ